自分の価値観の中に誰しもマイノリティ的な要素がある
──『ヒヤマケンタロウの妊娠』では、近未来の世界が描かれていました。現在はまだ育児でも仕事でも「マジョリティ」向けの型に適応していくことが求められる場面が多いと思いますが、今後はどうなっていくと思いますか?
ⓒ坂井恵理/講談社
坂井:私より10歳以上年下の矢本さんもそうですけど、若い男性の意識は確実に変わってきているし、日本社会も少しずつ変わっていると私は思います。政治家にはいろいろ言いたいことはありますが、私は希望を持って見守っていきたいと思っています。
自分1人では変わらないことのほうが多いし、男性だから、女性だから変えられるというものでもない。ひとりひとりの意識で社会は変わっていくと思います。
矢本:今回はマイノリティの話をしましたが、ほとんど誰しもが、自分の価値観を細分化していくと1つくらいはマイノリティ的な要素ってあると思うんですよ。人には言えないけれど「自分はこうだ」という要素が。
僕たちよりも、若い世代はそういうことに自覚的ですし「自分らしく生きる」ことの感度が高いと感じることがあります。SNSが普及したことで、昔と比べて「自分たちが生きる世界を自分たちで生きやすくしていく」「苦しまなくていい」と声をあげやすいという状態に近づいています。妊娠や育児みたいな領域に関わらず、それが社会全体に波及していけばいいな、とあらためて思いました。
──たとえ「マジョリティ」側にいたとしても、何かのきっかけや見方の角度を変えると「マイノリティ」となる可能性に満ちていることに自覚的でありたいし、マイノリティであることに苦しまないやさしい社会へより近づきたいですね。『ヒヤマケンタロウの妊娠』は、そうしたことに気づかせてくれる物語だと思いました。
原作はこちらから
男性が妊娠・出産するようになり、10年。
エリートサラリーマン桧山健太郎が、思いがけない妊娠に戸惑うなかで「男の妊娠・出産」に対する偏った考えを目の当たりにしながら、自分の居場所を確保するために奮闘する物語です。










