🔴【第1話から読む】自宅に段ボールいっぱいの“商品”、紹介ビジネスにハマった義姉に戸惑い|ネットワークビジネス義姉
かなこは夫にテニス行きを辞めるよう言いますが「義姉の機嫌を損ねたくない」という理由で拒否されてしまいます。かなこは、危険性より面倒事を避ける夫の態度に無力感を覚えて…。
夫に伝わらないもどかしさ
正春がテニスに行く日が近づいてきました。私の不安は頂点に達しています。インターネットで「ネットワークビジネス テニス」と検索すると、出てくるのは「勧誘の手口」「巧妙な誘い方」といった記事ばかり。義姉は、正春がテニス仲間と打ち解けた頃合いを見計らって、きっとビジネスの話を持ち出すに違いありません。
夜、はるとを寝かしつけた後、私は意を決して正春に切り出しました。
「ねえ、あのテニス、やっぱり行かないでほしい」
正春はスマホゲームから目を離さずに、気のない返事をします。
「えー、なんで?」
「だって、あれは普通のテニスサークルじゃない。調べたら、会員を増やすための集まりだって」
「姉さんがそんなことするかなあ?テニスだけやって帰ってきたらいいだろ?」
「お姉さんは、自分が良いと思ってるから悪気はないんだと思う。でも、正春を会員にしようと誘導しようと考えてるのは確かだよ」
私がそう言っても、正春の表情は少しも変わりません。彼の平和主義で面倒事を避けたい性格が、こういう時に最悪の形で出てしまうのです。
危機感を分かってくれない夫
「大丈夫だって。俺は別に興味ないし。それに、姉さんに誘われたから行かないと、文句言われるから。あの人、一度スイッチ入るとしつこいじゃん?ここで断って、義実家に帰ってくるたびにずっと言われるの、俺が嫌なんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の心に冷たいものが広がりました。正春は、危険を避けることよりも、目の前の「義姉の機嫌」という些細な面倒事を避ける方を優先しようとしている。
彼は、ネットワークビジネスの危険性より、義姉から文句を言われることの方が、ずっとリアリティーのある脅威だと感じているようでした。
「文句言われるのが嫌だからって、わざわざ危険な場所に行くの?契約させられたらすごいお金かかっちゃうかもしれないのに!」
私の声は少し荒くなってしまいました。正春はそこで初めてスマートフォンを置き、少しムッとした表情で言いました。
義姉が原因で夫と言い合いをしてしまった
「かなこはさ、姉さんのこと嫌いだから悪く言うんでしょ。テニスなんて健康的な趣味なんだから放っておいてよ」
「話を聞き入れてくれそうにない」という私の予想は、まさに的中していました。
「ネットワークビジネスを調べていろいろ見たんだけど、行くのやめたほうがいいよ」という言葉は、彼にとってただの「義姉への悪口」か「ヒステリックな妻の心配」としてしか響かないようでした。
私は無力感に襲われました。真正面から理論でぶつかってもダメ。情に訴えてもダメ。このままでは正春はテニスに行き、義姉と、その仲間たちから巧妙に勧誘されることになるのに。
「もういい……。分かった。でも、何か変な話があったら、絶対にすぐ私に電話して」
私はそう言って話を打ち切りました。夫を信じたい気持ちと、義姉の執念深さを知っている不安が、ぐるぐると頭の中で渦巻いていたのです―――。
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あとがき:家庭を守りたいだけなのに
妻として家族を守りたいかなこと、平穏と現状維持を望む夫・正春の価値観の衝突が描かれます。「姉に文句を言われるのが嫌だから行く」という夫の言葉は、かなこにとって、ネットワークビジネスの危険性よりも身近な人間関係のストレス回避を優先する夫の諦めにも似た心情を象徴しています。
これは、夫婦間でいかに共通の危機意識を持つことが難しいかを示しています。危険から目を逸らす夫に対し、かなこは、感情的な訴えではなく、客観的な「何か」が必要だと、自己の無力感を乗り越える決意を固めます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










