🔴【第1話から読む】不倫?純愛?子連れ再会で見せつけられた友人たちの“狂った距離感”
奈緒は、友人・里奈から「拓也が好き」と告白される。「まだ、一線は越えていない」と言うが、心はすでに特別なものへとかたむいていた。
きっかけは、何気ない公園での会話
里奈と拓也はもともと家が近かった。徒歩10分圏内。子どもが生まれてからは、自然と公園で顔を合わせるようになっていたようだ。
「今日も公園行く?」
そんなかるい感覚で、メッセージを送り合う。最初は、本当にそれだけだったらしい。
子どもを遊ばせるついでに、大人同士も話す。育児のグチ、寝不足のつらさ、離乳食が進まない話──。どこの家庭にもある小さな不満を吐き出しながら、共感し合う…。
「わかるわ〜」
その一言があるだけで、救われる日もある。それは、私自身もそうだし、何度もそれに支えられた。共感できない話ではない。でも──。
里奈の声が、電話越しに少し低くなる。
「拓也を気になり始めたのは、あの日、"私と似てる"って思えたからなの……」
そう前置きして、話し始めた。
「里奈はわるくない」の一言
ある日の公園。子どもたちが砂場に夢中になっている横で、拓也がぽつりと言ったらしい。
「俺さ……最近、家帰るのがしんどい」
里奈は最初、冗談だと思ったという。でも、拓也は笑わなかった。
「何か言うとさ、全部、否定されるんだよな」
「それはちがう」「あなたがわるい」「だから出世できないんだよ」
そんな言葉が、日常的に飛んでくるらしい。里奈は思わず、言ったそうだ。
「……実は、うちもなんだよね……」
それが、始まりだった。
里奈の夫も似たところがある。大声は出さない。手も出さない。でも、言葉でじわじわ削ってくる。
「お前は要領がわるい」「俺が稼いでやってるんだろ?」
冗談みたいに言うけれど、笑えない。
「私がわるいのかなって、ずっと思ってた」
里奈はその時、初めて本音をこぼしたらしい。拓也は、真顔で聞いていた。
「……里奈はわるくないだろ」
静かで強い怒りが込められたような拓也のその一言が、里奈の胸に刺さったという。
否定されなかった。味方になってくれた。ただ、それだけ。でも、それがどれだけ救いだったか。
「奈緒……分かる?」
電話越しの声がふるえる。
──分かる。分かってしまう。
だれかに「あなたはわるくない」と言ってほしい夜があること。でも、その“だれか”が既婚の異性であることが、問題なのだ。
“必要とされる感覚”の甘さ
「それからさ、公園行くのたのしみになっちゃって」
里奈は小さく笑う。
「今日いるかな?って…胸がドキドキした」
気づけば服装を気にするようになり、会話を思い出しては、寝る前に笑ってしまう。既読がつくだけで、心がはずむ。
私は、寒気すら感じ始めていた。里奈が拓也に向ける感情…それはもう、ただの友だちに向けるものではないと思った。
「ただ、本当に何もしてないよ?」
良心がいたむのか、里奈は何度もその言葉を使う。
「でもさ……私、拓也のこと、好きになっちゃったんだと思う……」
胸がざわついた。共感は距離を縮め、傷の見せ合いは心を近づける。そして、気づいた時には、お互いが“特別”になっている。
公園でならんで座る2人。子どもたちを見守りながら、目が合い、笑う。
その時間が、日常の中で一番のたのしみになる。それはもはや、友情の形をしてはいなかった。
「奈緒……どうしたらいいと思う?」
里奈の問いに、私はすぐには答えられなかった。
分かっている。このまま進めば、どこに行き着くのか。でも、止める言葉が見つからない。
なぜなら──だれかに必要とされる感覚は、あまりにも甘いから。
仲の良い友人は、いつしか“特別な異性”に変わっていた。ただ、一線は越えていない。
でも、心はもう、お互いにかなりふみ込んでいるように思えた。2人の親友として、その事実が一番、こわかった。
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あとがき:共感は時に"境界線"を越える
だれかに否定され続ける日々の中で、「あなたはわるくない」と言ってくれる存在は、光のように見えることがあります。
それが、既婚者同士であっても、心は理屈どおりには動きません。「一線を越えていないから大丈夫」。そう言い聞かせながら、実は一番、越えてはいけない“心の距離”が縮まっていく。甘さと危うさは、紙一重なのかもしれませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










