社会全体で守っていきたい「アレルギーっ子の命」
東京都の3歳児健診の調査によると、食物アレルギーの患者数は毎年増加しています。
食物アレルギーは、その子にとってアレルギーが出る食品を食べてしまうと、嘔吐、蕁麻疹、呼吸困難などとても苦しい症状が出てしまい命に関わる危険もあります。
食物アレルギーを持つ子のママが気をつけることは子供の年齢によって変わってきます。
1歳前後は落ちているものも食べてしまう危険があります。2~3歳以上になると親以外の大人たちとの関わりも多くなるので、知らないうちに親切な方がお菓子や欲しがったおかずを渡してくれているということもあります。
アレルギーを持つ子の命は、子供と関わる大人たちみんなで守っていく必要があるのです。
「何かアレルギーはありますか?」
この言葉が、ママの心と子供の命を救います。
まだ自己管理ができない年齢の子に最も多い、食物アレルギー
食物アレルギーは小さい子供に多くみられるのが特徴です。6歳以下の乳幼児が患者数の80%近くを占めており、その中でも1歳前後の子供の数が一番多いです。
食物アレルギーが完治して食べられるようになる時期は人それぞれで、3歳頃に食べらるようになる子もいれば、小学生になるまで持ちこす子もいます。
- ファイザー「食物アレルギーってなあに?」アナフィラキシーってなあに.jp(http://allergy72.jp/food-allergy/what.html,2017年6月19日最終閲覧)
- 海老澤元宏(監)「食物アレルギーの全てがわかる本」P10~(講談社,2014年)
- 国民生活センター「食物アレルギー」(http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201404_01.pdf,2017年6月27日最終閲覧)
アレルギーっ子との生活で大変なところは?ママに聞いてきました
実際にアレルギーを持つお子さんを育てている、インスタグラムで1万4,000人フォロワーのいる人気育児漫画家のimagineko(今じんこ)さんにインタビューをしてきました。
人物紹介
- 今じんこさん:平日は会社に勤めながら2人の男の子の育児に奮闘中。ほっこりした育児漫画が人気
- 叙情的な長男もっちん(4歳):ピーナッツアレルギー
- 猟奇的な次男ずん(1歳):卵、乳製品、小麦アレルギー
ほんわかした明るい親子のやりとりが人気の今じんこさんのイラスト。
そんなイラストの中にも少しだけ出てくる、卵、乳製品、小麦のアレルギーを持つ次男のずんくんの子育てについてより深く聞いてきました。
うどんを食べて救急車を呼ぶことに…
長男のもっちんに赤ちゃんの頃食物アレルギーがあったため、次男のずんくんに離乳食を与えるときはとても慎重だったという今じんこさん。
「6ヶ月後半にうどんを小さじ1あげました。おでこにポチっと発疹が出たものの虫刺されかな?と思い、次の日には一気に大さじ1のうどんをあげました」
その2時間半後にずんくんに全身の発疹、嘔吐、意識もうろうの症状が出て救急車を呼んだそうです。「今思えば、虫刺されかと思ったあれがアレルギー反応だったんです」と今じんこさんは語りました。
公共施設に落ちている食べカスがこわい
子供に食物アレルギーがあると、外食ができない、市販のお惣菜が買えない、保育園でお弁当持参を要求される、などの苦労があるという今じんこさん。
また、クラスの交流会やママ会などお菓子の出る場では「アレルギーがある子がいる」ということで気を遣わせてしまうことも多く、申し訳ない気持ちになることがあるそうです。
まだ1歳のずんくんの誤食がこわくて、公共施設に落ちている食べこぼしに敏感になったり、自宅でもお兄ちゃんの食べこぼしを怒ってしまったりすることも。「まだこぼす年齢だし、しょうがないのに怒ってしまって嫌悪感…」と2人育児ならではの苦労も語ってくださいました。
我が子が救急車を呼ぶほど症状が出る姿を見てしまっていたら…神経質になってしまうのも頷けます。
良かれと思って渡してくれたものも、もし口に入れてしまったら…
食物アレルギーは、アナフィラキシーショックという命に関わるショック症状を起こす可能性があることでも有名です。
「試食販売などもとてもこわいんです」と語る今じんこさん。親が見ていない場で許可なく食べ物を渡してしまうことは、本当に危険なのです。
保護者会などの場があれば、自身の子供にアレルギーがあることを事前に伝えるようにしているという今じんこさんですが、日頃の生活であまり面識のない方からサッと出されたときは対応しきれないこともあるといいます。
また、子供が喜んでもらってきたお菓子を「これは食べられないからダメ!」と慌てて手から奪い、大泣きされてしまったら…ママも罪悪感でいっぱいになってしまいます。
手作りすることで気づくことも
今じんこさんは手作りが大変というお話の反面、「市販のもので食べられないものが多い分、手作りが増えてより健康的な生活になった」とポジティブな面もお話してくださいました。
卵・乳製品・小麦のいずれかのアレルギーがあることは、毎日の料理選びに制限がかかるだけでなくお菓子やケーキに食べられないものが多いです。その中でも明るく語ってくださる今じんこさんに母親の愛を感じました。
今じんこさんがずんくんの1歳のお誕生日にはレシピを探して米粉のケーキを作ったという内容の投稿では、たくさんの応援コメントが寄せられました。
インタビューを通して見えてきた、私たちにできること
自分の子供にアレルギーのないママにとっては、「どう関わればよいのか」「一体どこに気をつけてあげればよいのか」と関わり方に悩むこともあるかと思います。
アレルギーっ子を子育てしているママへのこのインタビューでは、大人たちが大切にしたいことが見えてきました。
差し出す前に「何かアレルギーはありますか?」
良かれと思って大人が差し出したものや作ったもので、悲しい事故を起こさないためにも。
事前に「何かアレルギーはありますか?」という声かけがとても大切になります。
特に子連れで集まる機会や、バレンタイン、幼稚園のバザーなどのイベント事で子供と接することが多い、子育て真っ最中のママたちに心の隅にとめておいてもらいたい言葉です。
自宅に子供を招く機会がある方は、その場ではなく開催前にこの言葉を聞いておくととても安心です。
「じゃあデザートはクッキーではなくゼリーにしようかな!」と対応することができたり、「そのメニューならうちはアレルギーがあるので持参にしますね!」と言ってもらえたり、ママ同士で事前にコミュニケーションを取り合うことができますね。
アレルギー表示をご存知ですか?
食品には、特にアレルギーの発症数が多く重篤度が高いと判断される特定原材料7品目(卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに)の表示が消費者庁より義務付けられています。
上記以外にもごまや大豆など料理で身近に使うものがアレルギーの子もおり、その他20品目(ごま、大豆、さば、フルーツ類など)も表示が推奨されいます。
アレルギーを持つ子供のママは、食品やお菓子を買うときに袋や箱に書いてあるこの表示を必ずチェックしています。食品のパッケージには必ず記載されているものなので、今度ぜひ見てみてくださいね。
- 消費者庁「アレルギー表示について」(http://www.caa.go.jp/foods/pdf/food_index_8_161222_0001.pdf,2017年6月29日最終閲覧)
離乳食で「うちの子アレルギーかも…」と不安になるママへ
次男のずんくんが大さじ1のうどんを食べたときに症状が出たのが2時間半後だったことから、「アレルギーがあるかもしれない食材を初めて食べたときは、長い時間観察してあげてください」と教えてくださいました。
アレルギー反応は急に症状が悪化することもあるので、救急車を呼ぶことも常に頭に入れておくことが大切だと主治医からいわれたそうです。
こわいからという理由で離乳食を遅らせるのは良くないことです。しかし、一口大丈夫だったから次は大丈夫、ではなく慎重に本当に少しずつの量を増やすべきだということも改めて感じさせられるお話でした。
救急車を呼ぶか迷ったら
休日や夜間など、急な症状の悪化でもどこにも相談することができないときに救急車を呼ぶべきか悩んだら「#8000」の番号への電話で相談することができます。
小児科医師・看護師から救急車を呼ぶべきか病院へ行くべきか否かのアドバイスを受けることができます。
番号は全国統一ですが、時間帯などは地域によって異なりますし、市区町村ごとに救急相談ダイヤルがある場合はそちらの方が早く繋がる可能性もあるので一緒にメモしておきましょう。
食べることは幸せだから!大切にしたい合い言葉
インタビューでは、なんでも食べられるのが当たり前の生活からはなかなか想像がつかないリアルなお話を聞くことができました。
自分の子以外に何かお菓子や料理を提供するときは、大丈夫であろうと自分で判断せずに、
「何かアレルギーはありますか?」とママにかけるの合い言葉をぜひ大切にしてみてください。
お友達の中にはアレルギーがある子がいるかもしれないんだなという気持ちや少しの配慮が、大きな事故を防ぐことができるきっかけに、そしていつも気を張っているアレルギーっ子のママの気持ちを救う言葉になります。
食べることは幸せだから!食物アレルギーがある子もない子も安心して毎日楽しく食卓を囲めますように。