初めてのことに取り組むことが難しい…
幼児期は、初めてのことをたくさん経験して成長していくものです。発達障がいのある子供は、初めてのことに取り組むことが難しい場合があります。なぜ、難しいのでしょうか。発達障がいのある子供にとって、初めての取り組みが難しくなる理由は、三つ考えられます。
一つ目は、どんなことが起きるのか想像ができないことです。発達障がいのある子供は、行動の予測を立てることが苦手な場合があります。初めての取り組みでは何をすれば良いのかわからないため、参加がしづらくなります。
二つ目は、取り組みが難しすぎることです。子供の成長や能力に見合った内容でないと、何をすれば良いのか子供が理解できずに参加ができなくなってしまいます。
三つ目は、応用が苦手なことです。発達障がいのある子供の中には、今までに似たような活動や遊びをしたことがあっても、その知識や経験を他のことにつなげることが苦手な子供がいます。「これができるから、あれもできるだろう」と思って手順などの説明を省くと、初めての取り組みに参加ができません。
どうすれば初めてのことに取り組めるのか
初めてのことになかなか取り組めない理由を考えると、子供が参加をしやすいようにサポートしてあげたり、工夫したりする必要があることがわかります。いきなり遊ばせるのではなく、丁寧に手順を説明して行動の予測をしやすいようにしてあげ、大人がモデルを示すことで、遊びの全容を見せましょう。
初めての遊びに誘うときは、子供のできていることよりも低い段階の遊びから始めることも大切です。自分のできることであれば、子供も初めてのことでも参加がしやすくなります。できることを一つ一つ増やしていくことで、最終的にはできることが多くなっていくのです。
できることが増えると、子供も自信を持って取り組むことができます。自信を持つことで、取り組みへの意欲が湧くようになると良いですね。
初めてでも取り組みやすい遊びをご紹介!
初めての取り組みが苦手な子供に、ママができることは二つあります。一つは参加の仕方を工夫する、もう一つは子供が確実にできるようなことを選択することです。
子供が参加しやすい遊びをご紹介していきますので、自分の子供ができそうなものを探してみてくださいね。
キャラクターのお口にアーン(手先を使う遊び)
大葉リビ
手作りのキャラクターの顔つき容器に向かって、スプーンでビー玉を運ぶ遊びです。道具さえ用意してしまえば、大人が一人で実演してモデルを示すことができるので、子供も参加がしやすい遊びです。「アーンどうぞ!」などと言いながら楽しそうに食べさせると、子供の関心を引きやすくなります。
道具を使った遊びなので、手先をうまく使う必要があります。まだ、使うことが難しそうな場合は、他の遊びを試してみましょう。
また、子供がビー玉を口に入れないように注意しましょう。
準備するもの
- 画用紙
- マジック
- はさみ
- ガムテープ
- ポテトチップスの空き筒のような容器
- スプーン
- ビー玉
- トレー
キャラクターの顔つき容器の作り方
- 画用紙に、口を大きく開けたキャラクターの絵を描き、口の部分をくり抜いておく。
- ポテトチップスの筒の上に、1の絵を貼り付けます。
- 好きなキャラクターの仲間たちをいくつか同じように作成します。
キャラクターの顔つき容器は、これで完成です。子供と一緒に作ってみても良いですが、興味を示さない場合は、大人が作って遊びに移りましょう。
キャラクターの顔がうまく描けないときは、絵本やパンフレットのコピーなどを厚紙に貼って、口だけ付け足すようにすると良いですよ。
遊び方
- まず、モデルを示します。大人が子供に見えるようにして、ビー玉を乗せたスプーンを、作ったキャラクターの口に入れます。
- 子供が興味を示したら、机にキャラクターを置き、子供を椅子に座るように促します。スプーンを渡して、トレーにのったビー玉を取りやすい位置に置き、スプーンをキャラクターの口へ持っていかせます。子供がスプーンを使わないようであれば、ビー玉をのせたスプーンを子供に渡してみましょう。
- 全部入れ終わったら、いったん終了です。
ペットボールボーリング(全身を使う遊び)
大葉リビ
ペットボトルに向かってボールを転がす遊びです。順番で楽しむ遊びなので、初めての子供でも参加がしやすいです。ボーリングのルールを覚えることは難しいので、最初はルールと違った動きをしても受け入れて、少しずつ正しいルールを示してあげましょう。
ボールのコントロールがうまくできない場合は、ペットボトルとの距離を調整して、子供がボーリングを楽しめるようにしてあげましょう。
準備するもの
- 2リットルのペットボトル6〜10個
- 鈴(ペットボトルに入る程度の大きさのもの)20個程度
- ボール
- スコアを書く画用紙とマジック
- ビニールテープ
遊ぶ前に必要な下準備
- ペットボトルに鈴を2〜3個ずつ入れて、ボーリングのピンを作ります。
- スタートラインに、ビニールテープを貼ります。
- 3〜5回ほどのスコア表を作ります。
遊び方
- ペットボトルをボーリングのように並べて、大人がモデルを示します。
- 子供と交代して、投げてもらいます。子供の注意がそれてしまうようであれば、1投ずつで交代します。
- 倒れたペットボトルの本数を数えて、用意したスコア表に書き込みます。
- スコア表の最後の回になったら、「これでおしまい」と言って終了にします。さらに続ける場合は、新しいスコア表を作成して、最初から始めます。
モデルを示す時には、両手でボールを持って「3、2、1、0、発射!」などと言って、ゆっくり転がしましょう。子供が集中できそうであれば、2回投げますが、注意がそれるようであれば、1回で交代しましょう。
ルールを覚えて守ることが難しい場合は、無理に従わせずに子供がやりたいように挑戦させてあげるようにすることが大切です。
ドライブマップあそび(見立てる遊び)
大葉リビ
模造紙に地図を描いて、ごっこ遊びのように楽しむ遊びです。
「お買い物に行く」「病院に行く」など、子供が日常的に経験をしていることを取り入れて遊ぶと、より楽しむことができます。地図を家の周りの地理をもとに作成すると、日常的な経験を取り入れやすくなります。
他にも、「赤信号は止まれ」「一方通行」などの交通ルールを、標識などで取り入れることができ、子供の能力にあわせて遊びの難易度を調整できます。
準備するもの
- 模造紙
- マジック
- はさみ
- のり
- 自動車教本などの交通標識
- 広告などのロゴマーク
- ミニカー
- レゴブロック
ドライブマップを用意しよう
- 模造紙に、道や線路、建物などを地図のように書き込みます。道は少し幅を持たせましょう。
- 交通標識やロゴマークを切り取り、地図上にあると良さそうな場所に貼り付けます。
ドライブマップは、これで完成です。子供が制作に関心がないようであれば、大人が作ってしまって、遊びに移りましょう。
遊び方
- 大人がマップの上で、ミニカーやブロックを車に見立てて走らせます。子供が大人の持っているものを取ろうとしたら、別のものを渡しましょう。それでも大人のものを欲しがる場合は、交換しましょう。
- 子供が道に沿ってミニカーやブロックを走らせるのとあわせて大人も走らせ、「踏切や標識で止まる」「お店に入る」などのモデルを示します。「プップー」などの音を声に出して言うと楽しめます。
- 終わりにするときには、「車庫に止めて終わります」などと伝え、ミニカーやブロックを止めるように動かして置きます。「これで終わり」と言って、マップを片付けます。マップは見えない所にしまいます。子供が「もっとやる」と言ってもいったん終わりにして、別の遊びに誘います。
ダンボール電車(見立てる遊び)
大葉リビ
ダンボール電車は、道具を使って歩き回るだけなので、楽しみやすい遊びです。ルールを決めなくてもできるので、各々が自由に楽しむことができます。
「ガタンゴトン」などの声を出しながら、楽しそうにモデルを示せば、子供も参加しやすくなりますよ。
準備するもの
- ダンボール箱
- ひも(30cmくらいのものを2本)
- 画用紙
- セロテープ
- マジック
- ビニールテープ
ダンボール電車の作り方
- ダンボール箱の底を抜き、箱の内側に入れ込みます。
- ダンボール箱の外側の各面に画用紙をはり、電車の正面、側面、後面をマジックで自由に描きます。子供が興味を示さない場合は、ママがやってしまいましょう。
- ダンボールの側面に、持ち手として穴を開け、紐を通します。
遊び方
- ママが、作ったダンボール電車を抱えて自由に歩き回ります。
- 子供が興味を示すようなら交代して、子供にダンボール電車を抱えさせます。ママは「ガタンゴトン」などの音を声に出して言いましょう。
- 子供が歩き回っているのであれば、「乗せて」とダンボール電車の後ろにママがつかまって、一緒に歩きます。
- 終わりにする時には、「もう終わります。駅で降ります。」など事前の予告をしておきます。そして、「駅に着きました。降りてください。」などの言葉で、子供をダンボール電車から出るように促します。
遊びの中で注意したいこと
子供が転ばないように、周りのものや床に置いてあるものを片付け、スペースを確保しましょう。また、動き回る遊びなので、前を良く見るように声をかけてあげると良いです。遊びを終わらせるときは、「駅」「終電」「車庫」などの言葉を使って終わりに誘うと、より電車遊びを車掌さんになりきって楽しむことができます。
子供が取り組める遊びを提案することが大切
初めてのことでも、子供が楽しめるように工夫をしたり、子供ができる遊びを提案したりすることで取り組めるようになっていきます。子供のできることを理解することは、色々な取り組みに挑戦していけるようになるので、とても大切です。
『発達障害のある子が楽しめるあんしんあそび』という本では、発達障がいを持つ子供との遊び方についてカテゴリーごとに具体的な遊び方も紹介されているのでぜひ参考にしてみてください。今回ご紹介したもの以外にも、お子さんの好きな遊びもあるかもしれません。
本でご紹介している遊びはほんの一部ですが、子供との遊びが今以上に大人自身を「発達」させられるような機会となれば嬉しいですね。