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監修:齋木啓子

自閉スペクトラム症の特徴とは?診断までの流れと生活のサポート方法

自閉スペクトラム症とは、発達障害の一つです。1歳半健診で医師などから可能性について指摘を受けることがありますが、確定診断までには時間がかかることがあります。コミュニケーションの取りにくさや興味関心を寄せることへの強いこだわりが特徴で、親は育てにくさを感じることも。しかし、適切な療育や支援を受けることによって、親子ともに過ごしやすい環境を作ることは十分可能です。この記事では乳幼児期に見つかる自閉スペクトラム症の特徴と、子育てのポイントについてお伝えします。

PIXTA

自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症は、数多くある発達障害の一つです。発達障害とは、発達障害者支援法で以下のように定義されています。

「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。 ※1

法的に見ると、発達障害とは脳機能障害が存在していることが前提とされています。ただし、その特性の表れ方には濃淡があり、個性や性格か、あるいは障害かを明確に区別するのは難しいのも事実です。

「自閉スペクトラム症」とは、次の発達障害の総称として使われる言葉です。

  • 自閉症:言葉の遅れや知的障害を伴い、対人コミュニケーションが難しい
  • 高機能自閉症:自閉症であるが、知的障害が見られない
  • アスペルガー症候群:知的障害・言語発達の遅れはないが、コミュニケーションは苦手

自閉スペクトラム症の原因は不明ですが、これまでの多くの研究から、親の育て方やしつけ方などが原因ではないことがわかっています。

自閉スペクトラム症の特徴

2歳 手のひら PIXTA

自閉スペクトラム症の特徴は「コミュニケーション(対人関係)の障害」と「興味や行動への強いこだわり」。乳幼児の自閉スペクトラム症では、以下のような行動が見られます。

コミュニケーション(対人関係)の障害

  • あやしても目が合わない、反応が乏しい
  • 手を振って「バイバイ」する時、 手のひらを自分に向ける
  • 人見知りや親の後追いをしない
  • 言葉の発達が標準よりも遅れている

興味や行動への強いこだわり

  • 飛び跳ねる、おもちゃの車のタイヤを回し続けるなど、同じ動きを延々と繰り返す
  • 方法や手順、物の並べ方に強いこだわりがあり、いつも同じでないとパニックを起こす
  • 電車や昆虫、恐竜など特定のことに強い興味や情熱を持つが、範囲が狭い
  • 順番や競争などで一番になれないとパニックを起こしたり、相手とトラブルになったりする

こだわりや興味の対象は成長とともに変化し、以前のものには強い興味を示さなくなることもあります。このほか、周囲が気にしないようなちょっとした物音が気になるといった「感覚の過敏」、反対に、寒い日に半袖でも寒がらないといった「感覚の鈍麻」も、自閉スペクトラム症で見られうる特徴です。

ただし、これらの行動・特徴があるからといって、必ずしも子供が自閉スペクトラム症であるというわけではありません。

自閉スペクトラム症の診断

幼児 健診 PIXTA

1歳半や3歳での乳幼児健診で医師から発達の遅れを指摘されたり、保育園、幼稚園から集団行動での問題点を告げられたりすることをきっかけに、自閉スペクトラム症の発見、診断につながることがあります。

自閉スペクトラム症の診断は、小児科、児童精神科、発達障害の専門外来が行います。ただし、一度の受診のみでは診断できず、経過観察となることもあります。

発達障害を扱う専門外来は数が少なく、予約が数ヶ月先になることも。その場合、まずはかかりつけ医や自治体の発達相談窓口、療育機関で子育ての悩みや課題について相談してみるとよいでしょう。

出典元:

自閉スペクトラム症児の心と体の成長

2歳 公園 PIXTA

自閉スペクトラム症と一口にいっても、特性の強弱は個人差があり、成長に従って変化することも。ただし、自閉スペクトラム症自体は先天的なもので、特性を完全になくすことは困難です。

ここからは、自閉スペクトラム症のある子供の成長で起きうる問題とサポートの方法についてお伝えします。

成長の中で生じうる問題は、2つに分けられる

自閉スペクトラム症によって子供に起きうる問題は「一次的な問題」と「二次的な問題」の2つに分けられます。

一次的な問題

自閉スペクトラム症特有の、こだわりが強い、空気を読んで周囲に合わせることが難しいという特性による生活上の問題です。ただし、この問題は周囲の理解と支えがあれば、比較的乗り越えやすいものです。

二次的な問題

一次的な問題に対して適切な対処がないためにストレスやトラウマによって生じるのが、二次的な問題。特性のことで保護者や保育者から叱られる、友達に仲間外れにされる、あるいは集団生活についていけないなど、失敗や挫折を味わうことが二次的な問題の原因になりえます。

頭痛や腹痛などの身体症状や、不安、うつといった精神症状につながり、登園・登校拒否、暴力、自傷行為などに発展することもあります。

問題を最小限にとどめるためのサポートが必要

2歳 手のひら PIXTA

子供の生活上で起きうる問題を最小限にとどめるには、できるだけ早く子供の特性に気づき、サポートを受けさせることが肝心です。

サポートの基本は「療育」。発達支援センターなどの公的な施設や民間の施設のほか、医療機関などに併設された施設でも受けられます。グループ活動を通して、集団の中でのルールを学び、コミュニケーション能力を身につけます。

適切な支援と周囲の理解があれば、子供は生活に支障を感じにくくなり、自己肯定感が高まります。こうした変化が、一次的な問題と二次的な問題を緩和することにつながるのです。

家族は子供に合った接し方でサポートを

2歳 家族 PIXTA

発達障害は個性や特性に近いもの。「障害」ではなく「違い」ととらえ、その子にあった対応方法を見つけ出しましょう。

サポートのポイントは、その子のよい部分を手放しでほめ、自信を持たせることです。「頑張ったね」「上手だね」などのストレートな言葉で、努力したこと自体をほめましょう。また、評価されたことを視覚、触覚で感じやすいよう「抱きしめる」「ごほうびシールを利用する」など、言葉以外の本人が喜ぶ方法でほめるのもおすすめです。

集団生活に参加させる場合、保育士や教諭などに特性について説明し、本人が過ごしやすい状況を作れるように相談してみましょう。たとえば、極度に興奮してしまった場合には、「落ち着くグッズ(気に入っているぬいぐるみなど)を持たせる」「別室に移動させて落ち着くのを待つ」「以前嫌なことがあったときと同じ場面になることを避ける」などの対応ができるとよいですね。

まだ診断を受けていないとしても、わが子に合った関わり方をすることは子育ての上でプラスとなります。周囲と比べたり、育児書通りの対応をしたりすることにこだわらず、子供の反応や成長度合いを見ながら子育てをしましょう。

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将来、充実した生活を送れる可能性も十分ある

ノート 手元 PIXTA

自閉スペクトラム症のある子供たちは、特性のために生きづらさを感じることもあります。一方で、「人の意見を聞いてもぶれずに課題を遂行する」などの形で、特性が強みになることも。

「高い記憶力」や「好きなことへのこだわり」といった特性を発揮して、仕事や趣味で充実した生活を送っている方もたくさんいます。

本人が自信を持って自立に向けて歩んでいけるよう、保護者をはじめとする周囲の人が前向きなサポートをしてあげましょう。

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生きづらさを軽減しつつ、得意なことを伸ばして

3歳 走る PIXTA

自閉スペクトラム症の特性は、必ずしも生活上の支障になるとは限りません。「病気」や「症状」というよりも、持って生まれた性質と考え「生きづらさ」を軽減しながら得意なことを伸ばしましょう。

たとえ自閉スペクトラム症があるとしても、家族や周囲の理解とサポートがあれば、子供は楽しく、前向きに日々を送ることができます。

ママやパパも、悩みを背負い込まず、専門家や自治体の相談員にアドバイスを求めてください。小さな疑問も着実に解決しながら、親子で生きやすい環境づくりをしていきましょう。

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記事の監修

家庭医、在宅医

齋木啓子

2004年島根医科大学卒。独立行政法人国立病院機構姫路医療センターにて初期研修、CFMDにて家庭医療後期研修および在宅フェローシップ、Leadership Training Fellowship-distant(LTF-distant)修了。
12年にふれあいファミリークリニックを開設し、院長として勤務。17年にEU Business SchoolにてMaster of Business Administrationを取得し、LTF-distant運営・指導に当たっている。現在は悠翔会在宅クリニック新橋で院長として勤務。
家庭医療専門医、在宅医療専門医、経営学修士。

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本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応くださいますようお願いいたします。なお、記事内の写真・動画は編集部にて撮影したもの、または掲載許可をいただいたものです。

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