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3歳までの発達障害の診断は難しい?わが子が心配なときの向き合い方

子どもの発達スピードは一人一人異なります。でも、ふとした瞬間に近い月齢の子どもと比べて発達の差を感じたとき「うちの子は発達障害かも」と不安になった経験を持つ方もいるかもしれませんね。この記事では発達障害をテーマとした漫画 『リエゾン―こどものこころ診療所―』のワンシーンを参考に、児童精神科医の三木崇弘先生にお話を伺います。

ⓒヨンチャン・竹村優作/講談社

発達障害って、どんなこと?

 『リエゾン―こどものこころ診療所―』(以下、『リエゾン』)は、児童精神科を舞台としたお話。自らも「注意欠如・多動性障害(ADHD)」という発達障害を持つ女性研修医が、児童精神科に通う親子と向き合うストーリーです。

コミック第1巻では以下のように、児童精神科の医師が発達障害を「凸凹(でこぼこ)」と表現するシーンがあります。

ⓒヨンチャン・竹村優作/講談社

『リエゾン』の監修を担当した三木崇弘先生に、発達障害や「凸凹」というのはどのようなことかお伺いすると、次のように教えてくださいました。

「ヒトの発達は、順番に積みあがっていくものだとされています。例えば、首がすわる、お座りができる、立つ、歩く…というふうに。社会性・言語能力も、その月齢・年齢に応じた発達の目安が設けられています。これらの発達のバランスに偏りがある状態は“凸凹”と言われることもあります」(三木先生、以下同)

発達障害の種類はいくつかあります。例えば、発達年齢に見合わない多動や不注意が見られる「注意欠如・多動性障害(ADHD)」、コミュニケーションの障害や興味や行動の偏りがある「自閉スペクトラム障害(ASD)」といったものです。

乳幼児期に発達障害はわかる?

1~2歳は、発達の個人差がはっきりと見えてくる時期。公園や児童館で他の子どもとの関わり合いが出てくると、「うちの子の発達が遅い」と感じたり「発達障害があるかも」と思ったりすることがあるかもしれません。

発達障害には、その種類ごとに特徴があるとされます。例えば、厚生労働省のホームページによると「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の子どもには以下のような特徴がみられると記載があります。

乳児期早期から、視線を合わせることや身振りをまねすることなど、他者と関心を共有することができず、社会性の低下もみられます。 ※1

ⓒヨンチャン・竹村優作/講談社

『リエゾン』第1巻でも、自閉症スペクトラム症(ASD)を持つ子どもが、診療にやってくる様子が描かれています。一方、三木先生は「1~2歳の段階では発達障害を診断するのは難しい」と語ります。

「1歳半健診のころ、お子さんが寝ない、食べない、泣き止まないなど、特有の育てにくさや違和感を持っているお母さんが見受けられます。度合いによっては自閉症スペクトラム症が疑われることもあります。

しかし、医師から見ても『発達はゆっくりだけど、追いついてくるかもしれない』と考えられるケースがあることや、健診の場では一人一人の診察に時間を割きにくいことから、3歳児健診まで様子を見ましょうと助言されることが多いです。こうした子たちの中には、成長とともに社会性が追い付いてくる子もいますが、不安に思うお母さんもいるでしょう」

発達障害を専門とする病院等の中には、2歳ごろから自閉症スペクトラム症などを見つけるために、質問紙等を使用した検査を行う施設もあるといいます。3歳まで待つことを不安に感じる方は、近隣の病院などに問い合わせてみる手もあるでしょう。

また『注意欠如・多動性障害(ADHD)』について三木先生は「1~2歳での診断は、ほぼ不可能だと思います」と話します。

「この時期、多くの子どもには落ち着きや注意力がありません。手に負えないほど活発な子も、年齢と共に落ち着いてくることがあります」

注意欠如・多動性障害(ADHD)の場合、就学後になってから、じっとしていられない、暴れてしまう、友達に手を出してしまう…といった行動によって本人、親、先生などに困りごとがあったとき、受診につながることがあるそうです。

ママが抱え込まなくても大丈夫

「わが子が発達障害かも」と思うと、子どもの将来が不安になることがあるでしょう。 『リエゾン』の中でも、発達障害児を取り巻く現状がリアルに描かれています。中には、わが子の特性について誰にも相談できず、息苦しさや罪悪感を抱えている母親も。

第1巻のとあるお話でも、わが子との向き合い方に悩む母親が子どもと一緒に児童精神科を受診し、子どもが持つ特性と向き合い、不安を和らげていく様子が描かれました。

ⓒヨンチャン・竹村優作/講談社

発達障害の経過にも個人差がありますが、三木先生が学童期から継続的に診察をしている方の中には、社会に出て働いている方もいるそうです。たとえ発達障害があるとしても、生涯を通じて生きにくい状態が続くとは限らないといえます。

また、診断がつかない時期でも、地域の保健センターや小児科などで子育ての悩みを相談する、あるいは関わり方のヒントを得ることができると先生は話してくださいました。

<すべての子どもが幸福に育つ環境はおそらく存在しない だけど子ども時代の幸福な記憶は一生の宝物になる>

これは『リエゾン』に出てくる児童精神科医の言葉です。

ⓒヨンチャン・竹村優作/講談社

どのような育児でも、不安になったり「うまくいかない」と思ったりする状況はつきものです。育児書には「ママの笑顔が一番」という言葉が見受けられますが、簡単なことではありませんよね。

大人が軽やかな心を持って子どもと向き合うには、不安を感じた時点で、悩みを相談することが大切です。わが子に関する不安は抱え込まず、身近な子育ての専門家や医師に相談してみましょう。

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三木崇弘先生プロフィール

画像提供:三木崇弘先生

兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒、東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 博士課程修了(医学博士)。

愛媛県内の病院で初期研修・小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として7年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。

2019年4月よりフリーランス。“問題のある子”に関わる各機関(クリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、児童自立支援施設、保健所など)での現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動をしている。

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