育児ノイローゼとは何か?
「育児ノイローゼ」とは、育児に関することでストレスがたまり、心が不安感や落ち込みに支配されてしまう状態のことです。子育てをしているとかわいい子どもの成長を間近で見られ、楽しさや幸せを感じることもたくさんありますよね。
しかし、子どもが言うことを聞いてくれない、しつけがうまく行かないとイライラしてしまうことも…。子育てのイライラ感が募ると育児ノイローゼになって、心だけでなく体にまで症状が現れてくることもあります。
- 川崎メンタルクリニック「子育て不安と産後うつ症状」(https://kawasaki-mental.com/ikuji/,2022年5月11日最終閲覧)
- ふせき心療クリニック「育児ストレス(育児ノイローゼ)」(https://www.fuseki-clinic.com/column/ikuji_stress.html,2022年5月11日最終閲覧)
育児ノイローゼの原因とは?
それではなぜ育児ノイローゼになるのでしょうか?育児でイライラしたり不安になったりすることは誰にでもあることですが、次のような生活環境が原因で、育児ノイローゼと呼ばれるほどつらい症状に襲われることがあるのです。
原因1:ホルモンバランスが急激に変化したこと
育児ノイローゼのような症状が見られる場合、ホルモンバランスの乱れによって気分が落ち込みがちになっているのかもしれません。
妊娠から出産、産後の時期は、女性ホルモンの変動がとても大きい時期です。その急激な変動で精神的に不安定になることは育児ノイローゼの大きな原因となります。
原因2:ストレスや疲労の蓄積
ストレスや疲労の蓄積も育児ノイローゼを引き起こす原因の一つ。イライラや落ち込みに加えて、子育てによるストレスや疲れが長期にわたって蓄積されると育児ノイローゼになりやすくなります。
ストレスは自律神経のバランスを崩す原因でもあります。子育てに一生懸命になっていると、パパママはご自身の体を二の次にしてしまいがちですね。
特に出産直後のママは、ご自身の体が万全ではない状態で無理をしてしまうこともあるでしょう。
女性ホルモンが急激に変化する産後に、自律神経のバランスまで崩してしまうと落ち込みがひどくなってしまうので、ご自身の体のケアもしっかりとしてあげましょう。
原因3:相談できる人がいないこと
育児で悩んだときや困ったとき、相談できる人がいれば安心感が得られますよね。ただ相談できる人が周りにいないという方もいらっしゃるでしょう。1人で子育てをがんばる中で孤立感が深まると、育児ノイローゼにつながりやすくなるとされています。
人に相談することはストレス解消にも効果的なので、公共の相談窓口などを利用すると心が楽になりますよ。
原因4:1人で育児をしていること
パパが育児に協力的でなく、ママ1人で育児をしている環境も育児ノイローゼの引き金となります。
一つ前に解説した「相談できる人がいない」にも共通しますが、1人で1日中子どもに向き合うと孤立感を抱きますし、大きな心の負担となるはずです。育児ノイローゼはパパの協力があれば防ぎやすくなるでしょう。
原因5:両親が遠方に住んでいること
とても身近にいる子育ての先輩といえば、自分の両親ですよね。すぐに相談できる場所にいれば困ったときに頼れますが、遠方に住んでいてなかなか連絡が取れない…という状況では育児でのストレスがたまりやすくなります。
そのため両親と離れて暮らしている環境では、育児ノイローゼが起こりやすくなるとされるのです。
- 中野区立鷺宮図書館「(PDF)育児ノイローゼ」(https://library.city.tokyo-nakano.lg.jp/lib/files/sagipath201315.pdf,2022年5月11日最終閲覧)
- 働く女性の健康応援サイト「ストレスとは」(https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/column-3.html,2022年5月11日最終閲覧)
- 内閣府「(3)家庭や地域の子育て力」(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2004/html_h/html/g1223310.html,2022年5月11日最終閲覧)
育児ノイローゼでよく見られる症状
育児ノイローゼは、先ほど紹介した五つの原因により引き起こされやすくなります。
育児ノイローゼの症状は人によりさまざまですが、「もしかして自分も?」と思われる方は、ここから解説する育児ノイローゼでよく見られる症状をチェックして、ご自身と照らし合わせてみてくださいね。
症状1:イライラ感を抑えられない
育児ノイローゼでよく見られる症状が、怒りっぽくなって子どもの鳴き声を聞くとイライラする、イライラ感が抑えられない…というものです。
イライラ感が強くなると子どもを煩わしく感じてしまったり、パパにあたってしまったりすることも。特に理由もなくイライラすることが多いなら、育児ノイローゼの症状かもしれません。
症状2:育児への自信がなくなり悲観的になる
イライラすることもあれば、急に自信がなくなり悲観的になって涙が出るなど、精神的に不安定となるのも育児ノイローゼの症状の一つです。
育児のやり方に対する不安や焦りを感じたり、漠然とした不安に襲われたり…。憂鬱(ゆううつ)さが強く、「母親失格だ」と自分自身を責めてしまう方も少なくありません。
子どもが言うことを聞いてくれないから、泣きわめくからイライラする…というよりも、育児に自信が持てないから不安感や恐れ、イライラ感が募るというほうが正しいでしょう。
- 北海道大学「(PDF)「育児不安」研究の限界 : 現代の育児構造と母親の位置」(https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/28317/1/3_P27-34.pdf,2022年5月11日最終閲覧)
症状3:食欲に変化が現れる
急に食欲がわいてきてたくさん食べすぎてしまったかと思うと、食欲がわかなくて食事がのどを通らない…。このような食欲の変化は見られませんか?
食欲は自律神経により調整されていて、人の体は食べることによりストレスに対応しようとします。もし思い当たる節があれば、育児でのストレスを食欲で発散させようとしている反応かもしれません。
- e-ヘルスネット「ストレスと食生活」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-001.html,2022年5月11日最終閲覧)
症状4:睡眠が不規則になる
食欲だけでなく、睡眠に症状が現れることもあります。夜になってもなかなか眠れない、いくらでも眠れるほど眠い、早朝に目覚めてしまうなど、今までと睡眠時間が変わるのも育児ノイローゼの症状です。
育児の疲労感から体が休息を求めていたり、気持ちが高ぶって眠れなかったりとさまざまなことが原因で症状が現れます。
症状5:息苦しさや頭痛など身体的不調
育児ノイローゼの症状は心の問題だけではありません。息苦しさ・頭痛・喉の詰まり・肩こり・首こり・動悸(どうき)などの症状が現れることもあるのです。
育児ノイローゼではうつ病のような症状が見られることも少なくないですが、これはストレスによる自律神経バランスの乱れが原因だと考えられます。
- 中野区立鷺宮図書館「(PDF)育児ノイローゼ」(https://library.city.tokyo-nakano.lg.jp/lib/files/sagipath201315.pdf,2022年5月11日最終閲覧)
- ふせき心療クリニック「育児ストレス(育児ノイローゼ)」ふせき心療クリニック公式HP(https://www.fuseki-clinic.com/column/ikuji_stress.html,2022年5月11日最終閲覧)
- 医療法人社団 べスリ会 東京TMSクリニック「育児ノイローゼ ~産後うつ・育児に悩むお母さん・お父さんの悩み~」東京TMSクリニック公式HP(https://tms-clinic.jp/postpartum-depression/,2022年5月11日最終閲覧)
育児ノイローゼかなと思ったときに試したい対策方法
子育てに疲れてしまって何となくいつも不安…。「もしかして育児ノイローゼなのかな…」と思ったなら、こちらでご紹介する対策方法を試してみてください。
上手に対策していけば、今までよりも心軽く、楽しみながら子育てに向き合えるようになるかもしれません。
完璧主義になろうとしない
性格的に完璧主義な人は、育児ノイローゼになるリスクが高まる可能性があります。
「完璧に子育てをしないと」と思っても、子どもは思ったとおりに動いてくれませんよね。完璧主義な人は子育てやしつけが完璧にできないと、ストレスをためて自分を責めてしまいがち。
子どもも一人の人間ですから、完璧な子育てをすることはほぼ不可能なことでしょう。「手抜き子育て」でも子どもはちゃんと育ってくれる…と考えて、気を緩めることが大切ですよ。
育児から離れる時間を作る
育児をしていてつらい、疲れたと感じたら、育児や家事から離れる時間を作りましょう。ご両親や育児サポート施設を利用して、自分だけの時間を楽しめばストレスも解消されるはずです。子育ては24時間・365日ずっと続く大変な仕事です。
外で働きながら子育てをしている方なら、毎日本当に疲れてしまいますよね。1週間から1か月に1回、子育ても家事も何もせず息抜きをする日を作ることが効果的です。
自分を喜ばせてあげる
子どもを喜ばせてあげることばかりを考えがちなパパママ。しかし、ご自身を喜ばせてあげることも忘れないようにしてくださいね。
いわゆる「自分へのごほうび」をあげるとよい気分転換になって、楽しい気分になれます。いつも子育てを頑張っている自分に、ずっと欲しかったアクセサリーや洋服を買ってあげる、大好物のスイーツを食べさせてあげる、サロンでマッサージを受けさせてあげる…。
自分を二の次にしてしまいがちな子育て中だからこそ、意識的にご自身のケアをすることが欠かせません。子どもを喜ばせるように、ご自身を喜ばせることが心身の健康につながります。
仲の良い人と会話をする
ずっと家にいて子どもと向き合う毎日を過ごしているなら、たまには仲の良い人との会話を楽しむこともおすすめです。
昔から知っている友人・知人の方、ご近所の方、ママ友、よく行くお店の人など誰でも構いません。子育てのことではなく、何気ない会話をすることで一気に気持ちが晴れることもありますよ。
育児や家事から離れる時間を作れたら、仲の良い人たちとの楽しい会話やご自身の好きなことをして、目いっぱい自分の時間を満喫しましょう。
- HIKARI CLINIC「育児ノイローゼ」(https://hikariclinic.jp/examination/illnessinfo/childabuse,2022年5月11日最終閲覧)
- ふせき心療クリニック「育児ストレス(育児ノイローゼ)」(https://www.fuseki-clinic.com/column/ikuji_stress.html,2022年5月11日最終閲覧)
解決しない時は専門家へ相談
紹介した対策方法を試しても育児ノイローゼの症状が感じられるなら、早めに専門家へ相談するようにしてください。相談に使える窓口は次のようなところです。
- 心療内科
- 各自治体の地域子育て支援センター
- 子育てサークル
子育てサークルはママたちが作った私設サークルのことです。基本的には心療内科か地域子育て支援センターに相談することをおすすめします。
心療内科では投薬治療だけでなくカウンセリングを受けることもできますし、地域子育て支援センターでは子育てのプロに悩みを相談できます。利用する際には、お住まいの自治体に場所や開館時間を問い合わせてみてくださいね。
自分に合ったストレス解消法で育児ノイローゼ対策を
「子育てがつらい…」「育児から離れたい…」そんなつらさや不安感を抱いているパパママは、まず完璧主義を目指さず、蓄積されたストレスを解消することから始めましょう。
子育ては休みなく続く大変な仕事です。毎日完璧を目指していたら、心も体も疲れ切って育児ノイローゼになってしまいますよね。
周囲の人や育児サポート施設の協力を得ながら、ご自身のための時間を取ってストレスと疲れを解消することが欠かせません。もちろん、あまりに症状がひどければ専門家に相談することも考えてみてくださいね。