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保育当事者とデジタル技術を持つ企業がコラボ
横浜市ではDX推進の一環として、行政がもつ業務・サービス上の困りごとと、それを解決できるような民間企業のデジタル技術をマッチングさせる機会を設けています。
横浜市の調査によれば、外遊びにおける事故を防止するため、約7割の施設が「ICTを活用した見守り製品」に「関心がある」と答えています。ただ既存製品では子どもや保育施設では使いづらく、なかなか導入が進まないという現状があるそうです。
このギャップを解消するために企画されたのが「ICTを活用した子ども見守りサービス」に関する一連のプロジェクト。2024年2月に予定している実証実験に向けて、長年保育に従事してきたプロとデジタル技術や知見をもつ企業担当者、あわせて約30名が集まってワークショップが行われました。
ワークショップの様子
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当日は3つのグループに分かれ、「登園時」「園内保育時」「事務作業時」といった場面別に、保育の現場で日々感じている困りごとに対してどのような解決策があるかのアイデア出しが行われました。
例えば「未登園児の確認業務」に関して、保育当事者からはさまざまな声が挙がりました。
「登園していない子どもがいる場合、園としては必ず保護者に確認をとる。毎日3〜4人に対して電話をかけるのだが、一度では連絡がつかないことが多い。連絡がつかないことによる精神的な負担も大きい」
「登園管理システムを導入しているところもあるが、園側だけでなく保護者側が登録していないと意味がない。結局は電話をかける必要がある」
「一方的な連絡手段だけでなく、双方向で保護者側からの反応が得られるとよい」
これらの声に対し、企業担当者からは「医療用のICタグを所在確認に活用する」というアイデアが出ました。同時に、「園では服をしょっちゅう着替えるため、服につけるタイプだと十分に機能しない」「大きさによっては誤飲の問題もある」という意見も出ました。
また、機能やアイデアだけでなく、安全に使い続けられるような工夫も必須だという声も。
「システムだけでなく運用ルールもあわせて作らないと、負荷軽減にはならない。システムを作る側としては保育士さんに『新たに導入すると仕事が増える』と思わせないようにしないといけない。これくらい楽になるというのを伝える必要がある」
「すべてデジタル技術で解決しようとせず、アナログのほうがよい部分もある。保育士さんたちは子どもに向き合うことが仕事であって、合間にスマホを見るような余裕はないだろう。状況を把握するためにポケットからいちいちスマホを出さなくてもいいように、たとえばホワイトボードに表示するといった工夫が必要だ」
各グループではこのように活発なやりとりがされ、保育当事者からは「実現したらかなりの時間が生み出せる。ぜひお願いしたい」との反応もありました。
取材後記
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筆者は横浜市在住、なおかつ子が1歳のときから丸5年間保育園にお世話になったこともあり、育児当事者としても非常に興味深いワークショップとなりました。
保育園の現場で子どもたちと日々向き合うプロたち、保育の現場を支えるべく商品開発や機能改善に務めるデジタル技術のプロたち、そして両者をつなぐ行政の担当者たちがこうして知恵を出し合うことで、安心安全の保育が実現しているのだと実感しました。
横浜市によれば、来年2月には実際の保育の現場で実証実験を行い、来年度からの本格運用を目指すとのことです。他の自治体も追随する動きがあるかもしれません。全国にこのような動きが広がり、子どもたちがよりいっそう安心して園生活が送れるようになることを願っています。
- 横浜市「【ワーキング募集】ICTを活用した子ども見守りサービス | YOKOHAMA Hack!」(https://hack.city.yokohama.lg.jp/news/695,2023年9月25日最終閲覧)