青少年読書感想文全国コンクールとは?
青少年読書感想文全国コンクールとは、サントリーホールディングス株式会社が主催する読書感想文コンクールです。
2015年で61回目を迎え、子供や若者が本に親しむ機会を作り、読書の慣習化が目的です。読書で抱いた思いを文章化することによって、考える力と正しい日本語で表現する力を養います。
応募対象者は、小学校、中学校、高校に在籍している生徒です。個人応募は対象外となっており、原則として学校を通しての応募のみの受付けとなります。
対象図書は主催側が提示した課題図書もしくは、教科書や雑誌以外で自由に選んだ図書です。入賞した作品は毎日新聞や毎日小学生新聞、学校図書館、学校図書館速報版の紙上で発表されます。
さらに個人賞と学校賞が贈呈され、入賞作品は毎日新聞社が出版発行している「考える図書」に掲載されます。
コンクールで入賞する作品の4つの構成例
読書感想文コンクールで入賞する作品にするための基本的な構成は、「本を決めたきっかけ・理由」「あらすじ」「本を読んだ感想」「読書後の変化」の4つです。
この4つの内容をバランスよく文章に盛り込むことで、高評価を得やすい読書感想文となりますが、これら4つの内容を順番に書いていく必要はありません。
むしろ評価の高い読書感想文は、内容が入り乱れている場合が多いでしょう。
1.本を決めたきっかけ・理由
本を決めたきっかけ・理由は、文章全体の約10%の文量が目安となります。本を決めたきっかけはほとんどの場合、課題図書だったからといった理由でしょう。
しかし、身近な単語がたくさんあった、親近感が湧いたなど、数冊ある課題図書の中から一冊を選んだきっかけは何かあるはずです。その理由を膨らませて文章とするのがいいでしょう。
2.あらすじ
あらすじは文章全体の約20%の文量が目安です。本のあらすじは必ずしも書く必要はないといった意見もありますが、本を読んだことがない人にも伝わりやすい作品にするためにはある程度のあらずじは必要です。
ただし、あらすじは文字数を稼ぐ手段になってしまいやすいので、なるべく簡潔に短く納めるように意識しましょう。
3.本を読んだ感想
本を読んだ感想は文章全体の約30%の文量が目安です。感想となると、「面白かった」「すごいと思った」といった内容になってしまいがちですが、これだけでは不十分です。
どうして、どのように面白かったのか、感動したのかといった部分も必ず書くようにしましょう。
4.読書後の変化
読書後の変化は文章全体の約40%の文量が目安です。ここでは、本で読んだ感想を受けて、何を考え、学んだのか、そして自分自身がどのように変わったのか、という内容を書きましょう。
本を読んで学んだことや考えたことを、どのように文章化しているかということがとても重要であり、読書感想文の中で審査員が最も読みたい部分です。
しかしここは読書感想文の中でも最も難しい部分でもあり、上手く表現できる人は少ないようです。
金賞を狙う!書き出しテクニック
高評価を得やすい読書感想文の書き出し方は主に2つあり、本文引用の会話から入るパターンと、自分の感情から入るパターンです。
本文引用の会話から入るパターンの場合、読み手を引き付けることはできますが、その後に続く構成が難しくなります。自然な構成にできた読書感想文であるほど、高評価を得やすいでしょう。
自分の感情から入るパターンも、読み手を引き付けやすい方法です。表現された感情が激しいものであるほど、この文章を書いた人は何を感じ考えたのかということへの興味が湧きやすいでしょう。
コンクールで指定された過去の課題図書
読書感想文コンクールで選出される課題図書は、どの作品も読んでいて心に残り、考えさせられるものばかりです。親しみやすいストーリーと、発見、感動を伴う内容となっている本が課題図書となっています。
読書感想文を書く目的で読むのはもちろんですが、その本をただ楽しむという意味で、いろいろな本を読んでみるのもおすすめです。
2016年の青少年読書感想文全国コンクールで小学生の部に選ばれた課題図書をご紹介します。
小学校低学年
小学校低学年の部における課題図書は、絵やストーリーの親しみやすさ、読みやすさを意識して選出されています。
ボタンちゃん

アンナちゃんが着ているブラウスの一番上にとまっているボタンちゃん。ある日ボタンちゃんをとめていた糸が切れてしまい、ボタンちゃんはおもちゃ箱の裏側へ。
そこにはたくさんのアンナちゃんに忘れられてしまったと泣いているモノたちがいます。ボタンちゃんといろいろな忘れられた思い出たちとの出会いを描いた作品です。
ひみつのきもちぎんこう

きもち銀行では、いじわるや自分勝手なことをすれば黒コインがたまり、勇気を出したり努力をすれば銀コインがたまります。
黒コインがいっぱいになった主人公のゆうたのもとに、変な番頭さんが「なんとかせい!」とやってきて、ゆうたは黒コインをなくそうとする物語です。
みずたまのたび

ボウルの底にある一滴の水玉が空に舞い上がり、雲になり、雨になって土の中へ。そして川から海へ行くまでの地球の冒険を描いた作品です。
アリとくらすむし

アリからえさをもらう虫やアリを食べる虫、アリに隠れる虫、アリと助け合い、一緒に暮らす虫など、アリの周りに存在する、多くの知られざる虫たちを紹介した本です。
小学校中学年
小学校中学年の部では、やや非日常的な生活の中でも身近なものとして捉えられる物語ばかりです。メッセージ性が強い作品が課題図書となっています。
二日月

主人公の杏の妹である芽生は障害を持って生まれてきます。今にも死んでしまいそうな芽生に杏も両親もなんとか生きてもらおうと頑張ります。
杏は一人の友人に芽生を紹介しますが、障害があることについて「かわいそう」「迷惑」といったことを言われ傷つきます。
しかし杏自身も、芽生を恥ずかしいと思ってしまうなど、小学生の揺れ動く気持ちの変化を描いた作品です。
さかさ町
リッキーとアンは、おじいちゃんの家に汽車で向かう途中、橋が壊れていて立往生してしまいます。橋が直るまで待つ間に降り立った「さかさ町」そこはすべてがあべこべでした。
とても奇妙な町を冒険するリッキーとアンの物語です。
木のすきなケイトさん

森の中で遊び、木が友達で木の勉強が好きな女の子ケイトが教師として赴任した先は、木がほとんどない砂漠の町でした。
ケイトが木の勉強を続け、砂漠の町サンディエゴを緑あふれる町にするまでの物語です。
コロッケ先生の情熱!古紙リサイクル授業

新聞や牛乳パック、紙の箱など身近にある紙をリサイクルでよみがえらせる方法を、コロッケ先生が分かりやすく教えてくれる作品です。
小学校高学年
小学校高学年の部の課題図書では、主人公もしくはその周りで登場してくる人物と自分自身を重ね合わせることで、見えてくるもの、考えさせられるものがある作品ばかりです。
これまであまり触れることのなかった問題について、真剣に考える機会を作り、気持ちの変化を誘います。
茶畑のジャヤ

おじいちゃんに誘われてスリランカに行った主人公の周は、そこでスリランカの歴史を知り、「たくさん想像できる人は、人を殺さない」という言葉に出会います。
これをきっかけに、これまでの生き方を見直す周の気持ちの変化を描いた物語です。
ワンダー

顔に障害を持つ主人公のオーガスト・プルマンが学校に通い始めると、怖がり、「病気がうつる」という生徒が出始める。その一方で、オーガストの話に興味をもち始める生徒も現れます。
そんな学校生活の中、参加した夏のキャンプで事件が起こります。そのときのストーリと変化するオーガストやその周りにいる生徒たちの物語です。
ここで土になる

日本一の清流といわれ、アユが豊富に泳ぐ川辺川は、ダム計画が持ち上がり約50年に亘って翻弄されます。結局、ダム建設は中止されましたが、村人は高台への移転を決意します。
しかし村の人々が移転しても、唯一残った尾方茂さん・チユキさん夫婦。ご夫婦は誰もいなくなった村で次の世代のために畑の石を拾い続けます。
村や夫婦に込められた思いを写真とともに綴ったドキュメンタリー絵本です。
大村智ものがたり

ノーベル賞を受賞した化学者の幼少期から、ノーベル賞を受賞するまでの半生をつづった物語です。
低学年からコンクールにチャレンジしてみよう
読書感想文は、本を読むこと、学ぶこと、考えること、自分の考えを言葉で表現することすべてを経験できる良い機会です。ぜひ低学年の頃からお子さんに遊び感覚でも参加させてみてはどうでしょうか?
お子さんに本を読む面白さや、自分の考えを言葉で表現する難しさを知ってもらいましょう。読書感想文コンクールに参加することが、その後の人生をより豊かにするきっかけになるといいですね。