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サスティナブルな性教育を追求して生まれた「はじめての生理準備ボックス」
READY BOXプロジェクトを立ち上げたきっかけ
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my-muse編集部:READY BOXプロジェクトを立ち上げたきっかけは?
三上麗さん:2020年8月くらいから、自分でプロトタイプを組み始めました。10月に、一人で進めるのは難しいと気づいて、Instagramでサポートしてくださる方を募集したら、10人くらいの方がご連絡をくださって。自分とは違う生理の経験だったり、男性視点で知りたいことだったり。参考になる情報をもらいながら、プロジェクトとして本格的にスタートしました。
需要があって、自分で取り組みながら楽しいと思える性教育を推進したいけど、持続可能であるためには、ビジネスとして成り立たせて、世の中に貢献する必要があると模索していました。
そんな時に見つけたのが、海外の「初経の準備ギフトボックス」だったんです。既に他国では需要があり、文化としても根付きつつあるもの。日本でも広がってほしいと思いました。
READY BOXの中身は?
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my-muse編集部:READY BOXの中身はどんなアイテムが入っていますか?
三上麗さん:初経について学べる本や、ナプキンなど生理用品、もらってうれしいボディフェイスソープなどを入れています。アイテム選定では、布ライナーを入れるなど環境への配慮と、幼い子どもでも使用できる優しいものかどうかという点に考慮しています。あとは、なるべく多くの方に使っていただけるようにヴィーガンのものを入れるなど。
ボックスに入れているボディフェイスソープは、障害者自立支援を行っているところで生産しています。誰かに届けることで、他の誰かにも幸福が訪れるのってとてもいいなって思っていて。アイテム一つひとつの生産背景まで見ていきたいと思っているんです。
三上さん自身の初経お祝いの思い出
my-muse編集部:READY BOXは、初経に向けての準備だけでなく、お祝いの選択肢としても使えるとのことですが、三上さんの初経お祝いの思い出はどうでした?
三上麗さん:私自身の初経のお祝いは、本当に酷でした(笑)
よくある話ですけど、お赤飯が出てきたんです。もともとお赤飯は嫌いじゃないんですけど、「お祝いだよ!子どもを産める体になったんだね、おめでとう!」って祝われてもよくわからなくて。子どもの作り方さえ教わってないのに、生理=子どもが産める体って言われても・・・理解できなかったんです。
しかも父や兄もいる場でお祝いされたのも気まずくて。学校では生理について、男女バラバラで教育を受けるのに、家では一緒にお祝いするこの矛盾ってなんだろうって子どもながらに疑問を感じていました。
でも、母が手紙とコスメをプレゼントしてくれて、その時やっと「お祝いしてもらってる!」って実感が湧きました。
お赤飯が悪いとは思わないですが、ちゃんと説明をすべきだし、せっかくのお祝いなら、子どもが本当にうれしいと思える形で祝ってあげたいなと思って。ちゃんと子ども目線を考えないとと思って、一個の選択肢としてこのボックスを作ろうと思いました。
性に対するイメージを変えることが、性被害を減らすことにつながる
性被害や性被害者のサポートに取り組むきっかけについて
my-muse編集部:以前から「性教育」に関心をお持ちで、性被害や性被害者のサポートができるようなNPOで活動した経験もあるという三上さん。こういったサポートに取り組もうと思ったきっかけは?
三上麗さん:きっかけは、私が性被害にあったからなんです。性被害って、すごく心に残ってしまうし、引きずってしまう。決して癒えない傷なんです。性被害を減らしたい、加害してしまう人を減らしたいって気持ちが根本にあって、そのためには性教育がすごく重要だと考えていて。
一番辛かったのは、以前お付き合いしていた彼から、性行為の強要を受けた経験です。
それ以外にも小学校高学年のころ、スーパーで母と買い物をしていて、少し離れた間にグラビアのスカウトみたいな人から声をかけられて。今思い返すとすごく危なかったと思うのですが、「お母さんには言わなくていいから、連絡してね」と言われたことがありました。
幼いながらに、これはちょっと性に関係あるかもってなんとなく感づいていたから、母とは仲が良くて、すごくいい関係性なのに、言えなかったんです。
多分それって、性病や、性の強要、児童ポルノなど「性」に関係あるもの=恥ずかしいというイメージがあったから。じゃあそれってなんでかなって思った時に、性の学び始めるタイミングで良いイメージを持てなかったからかもと思って。
性を学び始める入り口はどこが適切?
my-muse編集部:性を学び始める入り口は、日本だと小学校でしょうか?
三上麗さん:そうですね。それが生理について学ぶときであることが多いと思うので、過去を振り返るとそのタイミングや内容ってすごく大切だなと感じていて。
今の日本の性教育って、男女がバラバラで授業を受ける学校も多いですし、学校によっても内容が違かったり、家庭内でも教育方針が異なったり。教えたとしても、丁寧に熱心に教えている方ってごく僅かだと思うんです。
性に関する会話や相談を恥ずかしいこと、後ろめたいことと思わずに気軽に話せる方が、私みたいに危ない状況にあったとき、家族や周りの大人、友人に助けを求められる環境が作れるはず。
大人になる過程の中でみんな色んな性行動をしていきますよね。そうなる未来を見据えたときに、知識がない状態では、自分を守る選択さえできない。知識を得ることの大切さをもっと考えて欲しいし、伝えていきたいと思います。
READY BOXが生理や性についての対話のきっかけに。
女の子たちにとって理想の在り方
my-muse編集部:これからクラウドファンディングを実施されるとのことですが、購入される方、ボックスを受け取る女の子たちにとって、どんな存在でありたいですか?
三上麗さん:まず子どもたちにとっては楽しくて、ワクワクできるボックスになって欲しいです。同時に、生理についての学びだったり、何か生理について分からないことがある時に見返したりできる、お守りみたいな存在になればいいなと思っています。日常になじんでいったらうれしいです。
あとは、ボックスを通して、生理や性についての知識を教える側の方のサポートをしたい気持ちも大きくて。親御さんとか、教員の方とか、施設の方とか、子どもに関わる立場の方には、生理や性について話すきっかけにしていただけたらと思っています。
話すタイミングや内容など、皆さん悩みどころだと思うので、そんな不安要素をサポートできるボックスになったらいいなと思います。ぜひ皆さんからご意見をいただきながら、ブラッシュアップしていきたいなと思っています。
性の対話のきっかけとして
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my-muse編集部:このボックスがあることで、性の対話のきっかけにしやすいでしょうね!
そうなって欲しいですね!小さい時は親子で開けてもいいし、大きくなってからも振り返って一人で見てもらえたらうれしいなと思います。
シングルファザーの方からも、自分ではよく分からないから、こんなボックスがあるとありがたいというお声もよく聞きます。
海外留学経験のある三上さんが思う、日本の性教育のこと
今後の展開について
my-muse編集部:今後はどのように展開していきたいと思っていますか。
三上麗さん:今動いている「生理」に関するボックスでは、ニーズがあれば、中身を変えることや、男の子が生理について学べるものも作っていきたいです。
将来的には、それ以外の性教育に関するボックスも作っていきたいですね。例えば、プライベートゾーンとか性的同意、性病、セルフプレジャー、精通についてなど。色んなタイミングで必要なことを伝えられるように、サブスクリプションサービスなどもできたらいいなと思っています。
今感じている課題は
my-muse編集部:今後の展開に向けて今課題だと感じていることはありますか。
三上麗さん:難しいことだらけですが…まずは日本国内での性教育の重要性や、学ぶことへの意識をより高めていきたいと考えています。性教育をもっと気軽に、身近に感じてもらえるように、ベストな情報の伝え方を考えていくのが課題です。
日本の性教育は他国と比較しても非常に遅れているので、3歳くらいからプログラムとしてできたらいいなと思っています。私はベビーシッターもしていて、近くで子どもたちの成長を見ていると、性に関する会話ができるタイミングってたくさんあるなって思うんです。
例えば、「ママのお尻から血が出た」とか本当にピュアな気持ちで話してたりするんですよ。そういった性教育のベストなタイミングをたくさん逃して、小学校高学年で勉強するのって、ちょっと唐突かなと。早め早めに教えていけたら、子どもも大人ももっとスムーズに性について会話できるようになるのかもと思いますね。
あと、この商品の難しいところは、購入者が大人だということ。子どもたちに届けたくても、ボックスを購入していただく方は、ご両親だったり、先生だったり、大人なので、そこが難しいなと思っていて。
子どもたちが自分で欲しい!と思っても、自分で手に取れない、そもそもこのボックスの存在を知ることができない。日本ももっと性についてオープンな文化があれば、キッズyoutuberと一緒にボックスを開けてみたりすることもしてみたいです。一緒にやってくれる人いないかな…?(笑)
子どもたちに直接お届けするにはどうしたらいいか考えているところです。
インターン大学生が三上さんのお話を聞いて
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今回は、Mellia株式会社でインターン中の大学生もインタビューに参加!大学生目線での質問にもお答えいただきました。
大学生:正しい性教育が行き届いていないことによって、大人にも曲がった性の知識や趣向が生まれてしまっていることもあるかと思います。今後その世代へのアプローチも考えていますか?
三上麗さん:今は、子どもたちへの教育に注力したいと思っていて。その子たちが大人になるころに、社会がより良く変わっていたらいいなって思っています。
大人向けの情報としては、最近youtubeをアップしています。友人や私のパートナーにも協力してもらったりもしているのですが、自分と違う人の意見を聞いて、世の中の色んな意見を知ることが、視野を広げる上で大切だと思っていて。youtubeでは、私たちと同世代の20-30代の方や、もう少し上の世代の方にアプローチできたらと思っています。
大学生:三上さんのお話を通じて、日本の性教育の遅れを痛感しました。幼いころから性に対して健康的な意識を持つことができるように、教育していくべきなのだと考えました。生理準備ボックスの立ち上げに対する思いやこだわりを伺うことができたので、身近な子どもたちにぜひプレゼントしたいなと感じました。
取材対象者:三上 麗 Ulala Mikami
READY BOXプロジェクト代表。高校時代に性被害を経験し、それ以降は性被害の啓発活動や性教育の大切さの発信を始める。大学時代は、人身取引被害者支援をするNPO法人ライトハウス広報インターン、学生団体コンゴの性暴力と紛争を考える会のメンバーとして活動。大学4年生からは、NPO法人ピルコンにてフェローとして小中高大学生への性教育の公演を行い自分を大切にするための情報提供に努めてきた。