【医療監修】妊娠30週目の妊婦は貧血に注意。胎児は脳が急成長しています

妊娠30週目の妊婦の様子

おなかがせり出してきて、反り気味の姿勢になる人が増えます。腰に負担をかけないよう、できるだけ背筋を伸ばしてゆっくり歩きましょう。この時期のおなかの大きさや起きやすい症状をご紹介します。

• 子宮底長：約25〜28cm

子宮底長(しきゅうていちょう)は恥骨結合部(左右の恥骨が合わさった部分)から子宮底(子宮のいちばん上)までの長さのことで、妊婦の体の表面部分を測ります。胎児の大きさや羊水の量を確認する目安になります。

羊水の量は妊娠30週目頃に約800mlになり、ピークを迎えます。この後少しずつ減っていき、妊娠末期には500ml以下になります。

週あたりの体重増加目安

• 妊娠前「やせ型」だった人(BMI18.5 未満)：0.3kg〜0.5kg
• 妊娠前「ふつう」だった人(BMI18.5以上25.0未満)：0.3kg〜0.5kg
• 妊娠前「肥満」だった人(BMI25.0 以上)：個別に医師と相談

全妊娠期間を通しての推奨体重増加量は、「やせ型」の人で9〜12kg、「ふつう」の人で7〜12kg。「肥満」の人は、およそ5kgを目安として個別対応することとなっています。この時期は「ふつう」の人で妊娠前よりプラス5〜7.5kg程度が目安です。上記の数値は、妊娠中期から後期にかけての1週間あたりの体重増加量の目安です。

体重を急激に増やすと妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を起こしやすくなります。しかし、神経質になりすぎて無理な食事制限をすることもよくありません。ストレスにならない程度に適正な体重増加を心がけましょう。

妊娠30週目の妊婦に起こりやすい症状とは

胎動が激しくなり、なかなか寝つけない人がいるかもしれません。眠るときに限って胎児が活発に動く、眠りについても胎動でひんぱんに起こされる、ということもあります。可能なときに昼寝をしてできるだけ体を休めましょう。

妊娠線があらわれやすくなります

大きくなったおなかや胸、太ももやお尻に妊娠線が出やすくなり、かゆみを感じることもあります。オイルやクリームを塗ってケアしましょう。妊娠腺は産後は半透明に変わって目立たなくなりますが、完全に消すことはできないので、できないようにしっかり保湿して予防することが大切です。

尿漏れしやすくなります

妊娠30週目以降になると、大きくなった子宮や胎児の頭で膀胱(ぼうこう)が圧迫されるようになり、尿漏れが起きやすくなります。気になる場合は尿吸収ライナーを活用するとよいでしょう。

尿漏れは自分の意思で止めることができますが、破水は止めることができずダラダラと出続けます。「もしかして破水かも？」と思ったら、迷わず受診してください。

貧血になりやすくなります

妊娠後期になると、胎児を育てるため、また出産に備えて血液の量が増えます。赤血球などの血液成分の生産が追いつかず、貧血(鉄欠乏性貧血)になりやすくなります。

牛肉やあさり、小松菜や納豆など鉄分の多い食事を意識してとりましょう。鉄の吸収をよくするためにビタミンCを一緒にとるとよいですよ。食事に気をつけても改善しない場合は、鉄剤が処方されることがあります。根気よく飲み続けましょう。鉄剤によって吐き気や便秘といった症状が出たときは医師に相談してください。

足のつけ根や恥骨が痛むことがあります

出産に備え、ホルモンの影響で恥骨結合や関節がゆるんできます。このため足の付け根や恥骨が痛むことがあります。骨盤ベルトや整体で楽になったという声もあります。つらいときは医師に相談しましょう。

妊娠30週目の胎児の様子

妊娠30週目の胎児はどのような成長をしているのでしょうか。胎児の大きさや体重・成長の様子をご紹介します。

• 胎児の大きさ(FL：大腿骨長)：約48〜60mm
• 体重：約1,100〜1,840g

FLとは大腿骨長(だいたいこつちょう)、太ももの骨の長さを指します。体重も順調に増え、中玉のメロン1個と同じくらいの重さになりました。この頃から、胎児は足を胸の前で抱え込むように折り曲げ、背中を丸くした姿勢をとるようになります。

さかんに親指を吸っています

脳が急成長するため、指を1本だけ吸うなどの細かい動きができるようになりました。胎児は親指をさかんにしゃぶっています。中には、指に吸いダコを持って生まれてくる赤ちゃんもいますよ。

体温調節や呼吸の機能が備わってきます

横隔膜を上下させて呼吸の練習をしています。肺の機能は34週くらいで完成するので発達の途中ですが、万一早産になっても生存できる可能性が高くなります。体温調節の機能もでき、出生に向けて準備をしています。

寝たり起きたりをくり返しています

この頃の胎児は、20〜30分ごとにおなかの中で寝たり起きたりをくり返しており、寝ている時は胎動も少なくなります。ただし胎動が極端に減り、安静にして様子をみても1〜2時間胎動を感じない場合は、次の健診を待たずに受診してください。

胎盤を通して母体の免疫(めんえき)を受け継いでいます

胎児は、外の世界で生きるために、胎盤を通して母体の免疫グロブリン(体を細菌やウイルスから守るタンパク質の一種)を受け継いでいます。この免疫は出生後4〜6ヶ月頃まで持続します。

逆子といわれても、まだ大丈夫です

この時期はまだ子宮のスペースにゆとりがあるので胎児は動くことができ、逆子は珍しくありません。いちど頭を下に向けたもののまた逆子になった、ということもあります。多くの胎児が34週頃までに頭を下に向けるので、焦らなくて大丈夫です。

医師から寝るときの体勢や逆子体操の指導を受けた場合は、無理のない範囲で取り入れてみましょう。

妊娠30週で切迫早産の兆候に気づいたら

切迫早産とは、早産になりかけている状態をさします。しばらく休んでもおなかの張りや痛みがおさまらない、性器から出血があった、破水した、といった症状があったら、すぐ受診してください。

この時期に早産した場合の胎児の生存率は95％です。ただし合併症の心配があるためNICU(新生児集中治療室)で経過を慎重に管理していくことになります。

切迫早産と診断されたら、胎児が1日でも長く子宮内にいられるよう、医師の指示に従って安静に過ごします。

妊娠30週目のおすすめの過ごし方と注意点

妊娠30週目の妊婦さんにおすすめの過ごし方と、注意すべき点についてご紹介します。ウォーキングなどの適度な運動は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の予防につながります。ストレス発散にもなるので、取り入れてみてくださいね。

睡眠を十分とりましょう

意識して睡眠をとりましょう。眠りが浅くなったり、胎動で起こされたりして睡眠不足を感じることがあるかもしれません。日中眠気を感じたら、少しでも横になれる時間をみつけて昼寝をするとよいですよ。

食事の時間をできるだけ一定にしましょう

妊娠糖尿病の予防のために、できるだけ一定の時間に食事をしましょう。食事の時間を一定にすると、血糖値が安定しやすくなります。早食いをすると血糖値が一気に上がりやすくなるので、ゆっくりよくかんで食べましょう。甘いものや脂っぽいもののとりすぎにも気をつけてくださいね。

必要な手続きを確認しておきましょう

働いている人は、産休や育休の申請など、必要な手続きや期限を確認しておきましょう。中には早めにお休みに入る人もいるかもしれませんね。退職する場合も手続きが必要です。あわてないようにやることをリストアップしておくとよいかもしれません。

仕事の引き継ぎなどで無理をしてしまいがちな時期です。できるかぎり体調を最優先にして、疲れたら休むようにしましょう。

外出するときは保険証、母子手帳を持参しましょう

外出は気分転換になりますが、長距離の移動は体に負担がかかります。心配なときは健診のときなどに医師に相談し、無理のない計画を立てましょう。

出かけるときは、健康保険証や母子手帳を持参してください。ひざかけやカーディガンなど、温度を調節できるものをひとつ持っているとよいですよ。

妊娠30週目、ゆっくり流れる時間を楽しみましょう

これから出産に向けて胎児はめざましく成長し、さらにおなかが大きくなります。少しの外出でも疲れやすくなり、無理がきかなくなってきます。今は胎児と一緒に、ゆっくり流れる時間を楽しむ時期と考えるとよいかもしれません。

生まれてくる赤ちゃんの名前を考える、散歩をして季節の移り変わりを感じるなど、今しかできないことがいろいろあります。きっと後から思い出すと貴重な時間になりますよ。