一語文を話す1歳児の姿
1歳ごろになると、自分の意思を伝えるために一語文を話し始めます。このころの子供は、舌を使わずに上くちびると下くちびるに力を入れて閉じた後、破裂させるように開いて出す「両唇音(りょうしんおん)」の発音が得意。パ行、バ行、マ行の音がそれにあたります。
このため、初めて話す言葉は「パパ」「ママ」「マンマ」といった単語であることが多いでしょう。一方、舌を器用に動かして発声するサ行、ザ行、タ行、ダ行は、発音が難しいようです。
また1歳半ごろになると、「ワンワン」「バイバイ」のような1音節や2音節を繰り返した単語がよく出てきます。パパやママからの声掛けも、音を繰り返す言葉を使うと上手にまねできます。
いろいろ言葉を発音しながら、その言葉で相手に意思が伝わる喜びを感じるときです。言葉をたくさん使ってコミュニケーションを取り、人と関わり合う楽しさを感じられるように接してみましょう。
- 楡の会こどもクリニック 石川 丹「楡の会こどもクリニック通信第29号」(http://nire.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/1abd4862683362642794b6f4df9f9849.pdf,2019年11月18日最終閲覧)
- 楡の会こどもクリニック 石川 丹「楡の会こどもクリニック通信第23号」(http://nire.or.jp/wp-content/uploads/2015/12/023.pdf,2019年11月18日最終閲覧)
- 細野一郎(編)「人間関係」91(一藝社,2005)
- 久留一郎「ことばと発達障害」(https://ir.kagoshima-u.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4370&item_no=1&attribute_id=16&file_no=1,2019年11月28日最終閲覧)
- 長野県立こども病院「言葉の発達と訓練」(http://www.nclp.jp/faq/categories/faq08.html,2019年11月28日最終閲覧)
子供の話したい気持ちをふくらませる接し方
わが子が一語文を話すようになったら、子供がもっと話したくなるような接し方をしてみましょう。日常の遊びややりとりを通して、子供が「もっと話したい!」と思えるようにサポートするのがおすすめです。
子供の遊びを実況中継
子供が遊んでいるとき、動作を実況中継するように言葉掛けをしてみましょう。
例えば、子供が歌に合わせて手をたたいているなら、「おてて パチパチ」と声を掛けます。次第に子供は親をまねて、手をたたきながら「パチパチ」と発音しようとするようになるでしょう。ほかにも、子供がボールを手渡してきたら「どうぞ だね」「ありがとう」と声を掛けてあげるなど、実行できる場面はたくさんあります。
大切なポイントは、「子供が好きなことに夢中になっているときに声掛けをする」という点。大人が言葉を一方的に教え込むよりも、興味があるものに関する言葉のほうが、子供の頭にすんなりと入っていきます。
また、声掛けは、子供が聞き取りやすくかつ理解しやすいように、短く、ゆっくり、はっきりと話しましょう。
- 楡の会こどもクリニック 石川 丹「楡の会こどもクリニック通信第29号(2015年12月)」(http://nire.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/1abd4862683362642794b6f4df9f9849.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- 堺市「子育て知恵袋 子どもと一緒に楽しく遊ぶために 」(https://www.city.sakai.lg.jp/kosodate/hughug/chiebukuro/guidebook/kodomo/index.files/2903asobi.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- こども家庭部子育て支援課「喃語や、大人が理解できない言葉が混じる」(https://www.hamasuku.com/faq/371.html,2019年11月28日最終閲覧)
言葉のつながりを意識できる遊びをする
一語文が出た後は、少しずつ二語文を引き出してあげるサポートをしましょう。二語文を話すには、2つの言葉を順番に並べることが必要になります。そのため、自然に言葉を順番に並べられるような遊びを取り入れてみるとよいでしょう。
そこで、おすすめしたいのはおままごと。食材を切る、調理する、盛り付けるといった一連の流れが順番になっているため、言葉の並びを意識しやすい遊びです。おもちゃの食材を切りながら「やさい とんとん」、次にお鍋に食材を入れて「おなべ まぜまぜ」、最後にお皿に盛り付け「〇〇ちゃん どうぞ」というように段取りを語り掛けます。
それぞれの言葉がどんなものや動きを指すか理解しながら流れを覚えていくと、自分で「やさい とんとん」などと話しながら遊べるようになり、二語文が完成していきます。
おままごと遊びのほか、生活習慣の声掛けに順序を取り入れるのもおすすめ。例えば歯磨きのときに「あーん して」「は ゴシゴシ」「ばいきん バイバイ」と声をかけるなど。子供がまねをするうちに、順序立てて言葉を組み立てられるようになっていくでしょう。
- 楡の会こどもクリニック「石川 丹 楡の会こどもクリニック通信第29号(2015年12月) 」(http://nire.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/1abd4862683362642794b6f4df9f9849.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- 楡の会こどもクリニック「石川 丹 楡の会こどもクリニック通信第23号(2007年5月)」(http://nire.or.jp/wp-content/uploads/2015/12/023.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- 堺市「子育て知恵袋子どもと一緒に楽しく遊ぶために」(https://www.city.sakai.lg.jp/kosodate/hughug/chiebukuro/guidebook/kodomo/index.files/2903asobi.pdf,2019年11月28日最終閲覧)
- 名古屋市「幼児期の発達を支援するために~それぞれの立場から~」(http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000010/10534/tayori32.pdf,2019年11月28日最終閲覧)
子供の言葉にプラスワンしてリピートする
子供が自然と言葉を吸収できるようにするには、日ごろの声掛けを「子供の言葉プラスワン」と考えるとよいでしょう。
例えばバナナが大好きな子供が「バナナ」と言ったら「きいろい バナナね」と二語文で返すなどです。バナナを食べている状況なら「バナナ おいしいね」、バナナが欲しいという意味なら「バナナ たべたいね」など、プラスする言葉は状況によって換えましょう。
子供の言葉に1つ付け加えてから声掛けすることで、色や形を表す単語や動詞など、いろいろな言葉に触れあえるようになります。
- 堺市「子育て知恵袋 子どもと一緒に楽しく遊ぶために」(https://www.city.sakai.lg.jp/kosodate/hughug/chiebukuro/guidebook/kodomo/index.files/2903asobi.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- 浦安市「〈言葉のめばえ〉」(https://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/000/923/8gekiasobi.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
- 厚生労働省「状態に応じた適切な援助及び環境構成を行うことが重要である」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b_0010.pdf,2019年11月25日最終閲覧)
楽しいやりとりで言葉の力を伸ばそう
子供がたどたどしく言葉を発する様子は、かわいいものですよね。パパやママがうれしそうに聞いてくれると、子供も伝わる喜びを実感できるはずです。
ただ、子供の話す力はまだまだ発展途上。子供の言葉の使い方や順番が間違っていても、否定したり言い直しをさせたりせず「そうだね」と受け止めてから、大人が正しい言い方で言いなおしてあげましょう。今は教科書通りに話すことではなく、言葉を使う楽しさを実感するのが大切な時期です。
子供が楽しみながらやりとりできる雰囲気を作りつつ、やさしく見守ってあげてくださいね。
- 愛知県青い鳥医療福祉センター「「ことばの発達とことばの遅れ」特集号」(http://aoitori-center.com/pdf/toku1.pdf,2019年11月28日最終閲覧)
- 北九州市「1~3歳のお子さん」(https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000819356.pdf,2019年11月28日最終閲覧)