目安は生理2日目。出血が続く場合はすぐに受診を
出血といっても、おりものに少し血が混じったものから、ナプキンやショーツに大量に赤い血が付くもの、何日も少量の出血が続くものまで、いろいろあります。
気をつけたいのは、真っ赤な血が大量に出て、出血が止まらないとき。出血量はいつもの生理の2日目よりも多い量を目安に、それ以上の量が継続して出る場合は流産などのリスクが高いと言えます。
普段の生理以下の出血量であれば診察時間内の受診でOK。出血が止まらない場合は自己判断せず、かかりつけ医に電話し、その指示に従ってください。
妊娠初期に起こる出血の原因
妊娠初期の出血は、妊娠したことで生じたもの、もしくは子宮疾患が要因になるもの、どちらかが主な原因となります。普段と違う症状を感じたら、自己判断せず医師に相談を。
妊娠による出血
異所性妊娠
子宮外妊娠とも呼ばれ、受精卵が子宮内ではなく卵管などに着床した状態。9割以上は卵管妊娠が原因で、卵管からの出血が子宮やおなかの中にたまり、出血や違和感、痛みを感じることが多いですが、無症状のケースも。
卵管着床を放置した場合、卵管が破裂して大出血を起こす危険性があります。
絨毛膜下血腫
受精卵から子宮内膜に根を伸ばし、胎盤を作る絨毛が、子宮内膜の血管を壊した際に出血、血腫となった状態。ほとんどの場合出血量は少なく、妊娠中期には出血が収まります。
出血量が多い、出血が慢性化した場合は、流産、早産などのリスクが高まるため、経過に注意が必要です。
初期流産
流産とは赤ちゃんが子宮で成長できず、外に出てしまう状態で、12週未満の流産を初期流産といいます。ごく初期は出血だけの場合もあり、生理と勘違いするケースも。
6~7週以降は生理痛のような痛みを伴います。胎児心拍が確認できれば安静に過ごすことで順調に経過することが多いです。
着床出血
生理と似た出血が少量、数日間続きます。生理様出血という人も。受精卵の着床は受精後1週間程度から始まり、12日頃に完了するため、生理が28日周期の人であれば、生理予定日の前後に起こることが多いようです。
ホルモンによって起こるもので、特に処置は必要ないケースが多いですが、長く続く場合は医師に相談を。
セックス・内診後の出血
妊娠中は子宮内の粘膜に炎症が起きやすくなるため、セックスや内診時の刺激が原因となりおりものなどに出血が見られることも。おりものに茶色の出血がまじる程度なら問題ありません。
万が一出血が長引く場合は、健診時に医師に相談を。精子が早産を促す要因になる場合もあるため、妊娠中のセックスには必ずコンドームを使用しましょう。
子宮疾患による出血
腟部びらん
子宮の入り口、腟部の表面の粘膜が赤くただれる状態です。皮膚が薄いため、炎症は不正出血が生じやすく、少量の出血がおりものに混ざることが多く見られます。
生理的なもので、成人女性の50%に見られます。炎症を起こさなければ、ほとんどのケースで治療は不要。経過を観察します。
ポリープ
良性の腫瘍で、妊娠の全期間を通じて起こります。大きさは米粒大から親指大まで。ほとんどは無症状で、おりものに出血がまじる程度。ポリープができる位置や大きさによっては、妊娠中に医師の判断で切開手術を行うケースもあります。
子宮筋腫
子宮壁の筋肉がこぶ状に固まった良性の腫瘍。複数個できることもあり、数や大きさやできた場所によって出血などの症状が異なります。子宮の内側、子宮の筋肉のなかにできた場合は、不正出血の原因に。
妊娠中に大きくなることもあるので観察を続け、出産をしたあと、必要に応じて治療します。
子宮頸管の炎症
細菌感染などによって腟や頸管が炎症を起こす状態。出血量はおりものに血が混じる程度。放っておくと早産の原因になることもあるので、飲み薬や軟膏、腟剤などで治療します。
尖圭(せんけい)コンジローマ
ヒトパピローマというウイルス感染により、性器や肛門の周りに尖ったイボができ、排尿や排便時に痛みや出血が出ます。赤ちゃんの成長を阻害することはありませんが、出産時に赤ちゃんがイボに触れると母子感染する可能性があるので、帝王切開になることも。
ヘルペス
外陰部などに単純ヘルペスウイルスが潜伏し、水泡やかぶれができ、それが悪化すると出血することも。産道感染により、赤ちゃんが肺炎や脳炎を起こす危険性があります。抗ウイルス薬の注射や内服薬、軟膏などで治療します。
出血があった際の対処法
妊娠検査薬で陽性反応が出たのに胎のうが確認できず、出血の症状が見られる場合は異所性妊娠や絨毛性疾患の可能性があるため、1週間位後にまた検査を受け、胎のうの有無を確認、出血の原因を探ります。
妊娠初期の出血は不安になりますが、すでに赤ちゃんの心拍が確認できている、出血量が少ない、一時的な出血であればそれほど心配ありません。目安として、生理2日目より多い量の出血が続く場合は、かかりつけの医師に電話で相談の上、必要な指示を受けましょう。
安静指示などの処置で、健診の途中で、症状に大きな変化が見られない限り、9割は妊娠を継続することが可能です。いずれにせよ、妊娠がわかった時点でクリニックや産院を受診することが大切です。
病院に連絡する際にまとめておいた方がよいポイント
出血があった場合は、清潔なナプキンやライナーを当て、出血量を確認。出血量が多く、止まらない場合は、以下のポイントをまとめ病院に連絡を。
- 出血がいつからあるか
- 出血の量
- 痛みや張りはあるか
- これまでの経過
出血量の目安は生理2日目の出血量。それより多いか少ないかを伝えるとよいでしょう。痛みは、どのような痛みなのかを伝えましょう。例えば、鈍痛や刺すような痛みなどの表現があります。
これまでの経過は、胎のう確認済や、心拍確認済など、それまでの健診で医師から説明されたことをわかる範囲で伝えれば大丈夫です。
出血の原因はさまざま。焦らず状況を観察しましょう
妊娠中に出血をすると、流産を想像して慌ててしまいがちですが、実は不正出血はよくあること。出血の原因はさまざまなので、まずは落ち着いて出血の状態を観察しましょう。
胎児心拍が既に確認できている場合、しばらくして血が止まるようであれば大丈夫。妊婦健診の際に状況を医師に伝え、内診・超音波検査で原因を調べてもらいましょう。
量が多く、出血が長引くようであれば、診察時間外でもかかりつけ医に電話を。病院へ行く際は車かタクシーを利用しましょう。
※この記事の情報は2017年10月31日取材現在のものとなります。最新の情報は医療機関へ受診の上、各医師の診断に従ってください。