妊娠9ヶ月の妊婦の様子
妊娠9ヶ月になると、子宮底長は約30cmとなり、子宮底は妊娠期間中で最も高い、みぞおちのすぐ下あたりまでになります。胃が圧迫されて胃酸が逆流し、ムカムカするのみならず、肺や心臓まで圧迫されて、動悸・息切れなどにも悩まされる人もいるでしょう。
また、胎児の頭が骨盤内に入り、出産に向けて股関節がゆるむため、足の付け根に痛みが出ることも。腟や子宮口も出産に向けて少しずつやわらかくなってきます。
前駆陣痛
妊娠9ヶ月の後半になると、おなかが張り、生理痛のような痛みを感じる事があります。これを、前駆陣痛といいます。陣痛と聞くと、「もう産まれるの?」と思う方がいるかもしれませんが、前駆陣痛はすぐに分娩につながるものではありません。
出産にむけて、体が子宮を収縮させる予行練習をしていると考えましょう。前駆陣痛は、しばらく休んでいれば自然と治まり、多いときには日に4~5回起きることもあります。
本陣痛との違い
本陣痛との違いは、規則性があるかどうかで判断できます。本陣痛は痛みが起きる間隔に規則性があり、間隔が徐々に短くなっていくものです。
また、おなかの張りが数時間続く、流れ出るような出血がある、耐えられない痛みなどの症状がみられる場合は何らかのトラブルの可能性があるため、受診しましょう。
おしるし
おしるしは、産徴(さんちょう)とも呼ばれ、分娩開始前にみられる出血の混じったおりものを指します。子宮壁に貼りついていた卵膜が、子宮下部が開いてくるのに伴ってはがれ、出血を起こすのです。
おしるしがあってから陣痛までの日数には個人差があり、おしるしがなくても陣痛が来ることもあります。
頻尿
妊娠末期になると、頻繁にトイレに行きたくなるでしょう。また、ふとした瞬間に尿漏れを起こすこともあります。
これは、妊娠全期間を通して起きる血液量の増加により、非妊娠時より尿の量が増えていることに加え、大きくなった子宮で膀胱が圧迫され、尿を溜めておける容量が少なくなることが原因です。
トイレが近くなるからといって、水分を控えることはしないでください。赤ちゃんのためにも、しっかり水分補給をしましょう。
睡眠不足
妊娠末期になると、大きくなったおなかでいつもの姿勢がとれず、寝つけないと悩む妊婦さんが多いです。姿勢だけでなく、胃がムカムカして寝つけない、動悸・息苦しさなどが気になって寝つけない、頻尿で寝つけない、足がつって目が覚める、胎動で目が覚めてしまうなど、寝不足になる妊婦さんが多いです。
解消法として以下のようなことが挙げられますが、無理に寝ようとせず、昼寝をするなどの工夫も必要です。
- 夕食は早い時間に、軽く済ませる
- シムスの体位で横になる
- 抱き枕を使う
- 足の指を動かして血流をよくする
シムスの体位は、体の左側を下にして横向きになり、左足を延ばして右足を自然に曲げるという体勢で、腰痛がつらいときにもおすすめです。
妊娠9ヶ月の胎児の様子
胎児は、身長約40cm~45cm、体重は約1.5kg~2kgに成長しています。34週になると胎児の肺は成熟し、おなかから出ても自分で肺呼吸をすることができるようになっています。そのため、34週以降の早産であれば、正期産の時期(俗にいう正産期)に生まれた子(37週~41週の間に出生)と機能面では大きな差がないと言われています。
体つきはよりふっくらとし、皮膚の赤みやシワもなくなって、赤ちゃんらしい顔立ちになります。顔や腹部に生えていたうぶ毛が消え、髪の毛や爪が伸びてきます。男の子の場合、今まで体の中にあった睾丸が、陰嚢の中へ降りてきます。
妊娠9ヶ月の妊婦健診
この時期の妊婦健診は2週間ごとに受診します。一般的な、体重や尿検査の他に、血液と腟分泌細菌検査(B群連鎖球菌、GBS)を行います。GBSは腟の常在菌で、全妊婦の10~30%から検出されるもの。GBSを保有している妊婦さんのなかでも、GBSが腟内にある方の場合、出産時に新生児が産道感染を起こすことがあります。
確率は1%ほどと高くはありませんが、敗血症、髄膜炎、肺炎など、重症のB群連鎖球菌感染症を発症する可能性があるため、検査結果によっては分娩時に抗生物質の点滴投与が行われます。
NST(ノンストレステスト)
NSTは、ノンストレステストの略。これは、ストレスのない状態で胎児心拍を観察し、胎児の状態が良好なことを確認するための胎児心拍数モニタリング検査です。主に、陣痛開始後や予定日を大きく過ぎているときに行いますが、それ以外でも医師の判断で行われます。
胎児は20~40分ごとに寝たり起きたりを繰り返しており、寝ているときは心拍数が減り、起きて体を動かすときには一過性頻脈と呼ばれる、一時的な心拍数の増加がみられます。
- ベースとなる心拍数が110~160bpmの間である ※
- 基線細変動(胎児心拍数の変動)がある
- 一過性頻脈(一時的な心拍数の増加)がある
- 一過性徐脈(一時的な心拍数の減少)がない
これらの条件を満たしていれば、胎児の状態は良好であるといえます。
※bpmは「beat per minutes」の略で、一分間の心拍数を指します
健診で逆子と言われた
健診で「逆子ですね」といわれても、あまり心配はいりません。出産予定日までに自然に直ることも多いのです。気になる場合は、逆子直しの体操を試してみましょう。これは、赤ちゃんのからだを骨盤から離れさせ、くるんと回転しやすい状態を作るためのポーズです。体操を行う場合でも、助産師からの指導を受けましょう。
その他にお灸やマッサージ、ツボ押しなどもありますが、自己流での施術は避け、必ず医師などの専門家から指導を受けましょう。
妊娠9ヶ月にやっておきたいこと
妊娠9ヶ月が終わると、いよいよ臨月に入ります。仕事をしていた方も、34週頃には産休に入られるのではないでしょうか。出産予定日を含む産前の6週間が、請求すれば休める産前休業期間です。予定日より遅い出産になった場合、出産した日までが産前休暇になります。
お休みに入ったら、赤ちゃんを迎える準備、入院の準備、産後の準備に抜け漏れがないかチェックをしておきましょう。
入院するときに持って行くものの準備
入院時に持って行くものを、わかりやすい場所にひとまとめにしておきましょう。荷造りしてしまってもいいのですが、まだ普段の生活に必要なものもあるはず。出したらそこへしまうということができるなら、しまう場所を固定するのがおすすめです。
パートナーや家族に、あらかじめ荷物について話しておけば、いざというときに「○○のバッグと、●●の袋を病院に持ってきて」とお願いしやすくなりますよ。
赤ちゃんの名前を考える
出生届は、赤ちゃんが産まれてから14日以内(国外での出産の場合、3ヶ月以内)に提出しなくてはなりません。医師や助産師に記入してもらう欄もあるので、たいていは産後の入院期間中に書類を準備するようです。
名前を最終的に決定するのは、出産後に赤ちゃんの顔を見てからで間に合いますが、候補の名前はそろそろ考えて話し合っておきましょう。なお、正当な理由なしに出生届の提出が遅れた場合、簡易裁判所から通知がきて、5万円以下の過料を支払うことになるので注意を。
早産のリスクを下げる生活を心がける
妊娠9ヶ月で出産すると、早産となります。赤ちゃんは、できれば正期産の時期(37週~41週)までおなかの中で育つ方がよいですよね。日常生活の中で気をつけたいポイントは以下の通りです。
おっぱいマッサージを頑張り過ぎない
母乳育児のためにおっぱいマッサージをする方もいるでしょう。しかし、おっぱいへの刺激で、子宮の収縮を起こすことがあるため、おなかが張ったらマッサージをやめましょう。
セックスはコンドームを使用し、おなかが張ったら中止
おっぱいの刺激同様、セックスの刺激も子宮の収縮を起こします。おなかが張ったら中止しましょう。また、感染症予防のため、必ずコンドームを使用してくださいね。
体の冷えに気をつける
下半身が冷えると、子宮収縮を起こすことがあります。特に寒い時期には、冷えないように気をつけましょう。
疲れ、ストレスをためこまない
疲れやストレスがたまると、体の免疫力が下がり、ウイルスや菌に負けやすくなってしまいます。ただでさえおなかが大きくて動くのが大変な時期ですので、動きすぎやストレスがたまるようなことは避けましょう。
後期つわりの症状もあと少しで終わります
大きくなったおなかで胃などが圧迫されることで起きる、胃や食道のムカムカは「後期つわり」と呼ばれますが、この症状も臨月に入ると治まります。今は食事を少しずつ食べる、おやつで補うなどして乗り切りましょう。
また、なるべく長時間ひとりで外出するのは避け、母子手帳と保険証は常に持ち歩くようにすると安心です。赤ちゃんに会えるまで、あと少しです。
※この記事の情報は2017年12月15日取材現在のものとなります。最新の情報は医療機関へ受診の上、各医師の診断に従ってください。