妊娠10ヶ月(臨月)の妊婦の様子
この頃になると、お産の準備として、赤ちゃんが骨盤の中へ下がります。これによって、感じていたムカムカがおさまり、ついつい食べ過ぎて一気に体重が増加してしまうことがでてくる時期。
また、胸部への圧迫感も薄れるため、動悸や息苦しさは減りますが、膀胱や腸への圧迫は増えるため、頻尿、尿漏れ、便秘などにも悩まされます。恥骨痛や股関節痛が起こる方も出てくるでしょう。
臨月のおなかの大きさと、体重増加の目安
みぞおちのすぐ下まできていた子宮底が下がって、おなかのふくらみも全体的に下がってきます。このとき、子宮底の位置は8ヶ月のころと同じおへそとみぞおちの間くらいに。ただし、おなかのふくらみは8ヶ月のときよりも大きくなっていて、子宮底長は33cm程度になっています。
胃への圧迫感がとれ、妊婦さんの食欲は増してきます。分娩に耐える体力をつけるためにも、しっかりと食事を摂りましょう。ただし、体重増加の上限は、妊娠前に痩せていた人でも11kgです。体重の増やし過ぎは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、分娩時の微弱陣痛のリスクを伴うため、気を抜かずに過ごしましょう。
妊娠10ヶ月(臨月)の胎児の様子
- 身長:約45~50cm
- 体重:約2,000~3,000g
外見は赤ちゃんらしい丸みのある体形になり、体内では内臓や神経など全ての器官が完成します。妊娠経過が順調であれば、妊娠37週~42週未満の間に分娩が始まります。
正期産の時期(37週~42週未満)に生まれた新生児の体重は、2,500g ~3,999g までが正常とされています。
妊娠10ヶ月(臨月)の妊婦健診
臨月である妊娠36週以降は、週に1回健診を受けることになります。妊娠初期から受けている、体重や血圧、尿検査はもちろん、血液検査ももう一度受けます。
その他に、分娩の準備ができているかどうか調べるため、頸管成熟度、産道評価、胎位・胎向、児頭の固定状態なども確認していきます。
また、分娩時の母子産道感染で新生児に重篤な状態を引き起こす可能性がある、B群連鎖球菌(GBS)の検査も受けます。産道感染を起こすウイルスは、他にも以下のようなものがあります。
- 水痘(すいとう)
- 単純ヘルペスウイルス
- 尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)
- B型肝炎、C型肝炎、HIV
- 淋菌(りんきん)
- カンジダ
- クラミジア
これらに感染している場合は、医師の指示に従って適切な治療を受け胎児への産道感染を防ぐことが大切です。
NST
NSTは、ノンストレステストの略で、ストレスのない状態で胎児心拍を観察し、胎児の状態が良好なことを確認するための胎児心拍数モニタリング検査のことを指します。通常は、陣痛開始後や過期妊娠(42週以降)で行いますが、医師の判断によって健診時に行うこともあります。
胎児は20~40分ごとに寝たり起きたりを繰り返しており、寝ているときは心拍数が減り、起きて体を動かすときには一過性頻脈と呼ばれる、一時的な心拍数の増加がみられます。
- ベースとなる心拍数が110~160bpmの間である ※
- 基線細変動(胎児心拍数の変動)がある
- 一過性頻脈(一時的な心拍数の増加)がある
- 一過性徐脈(一時的な心拍数の減少)がない
これらの条件を満たしていれば、胎児の状態は良好であるといえます。
※bpmは「beat per minutes」の略で、一分間の心拍数を指します
妊娠10ヶ月に起こる出産の兆候
妊娠36週~39週6日が臨月ですが、正期産の時期(37週~41週6日)は目前に迫っています。この時期は、いつ分娩が始まってもおかしくありません。臨月に起こる出産の兆候には、いくつかの種類があります。
おしるし
おしるしは、分娩の前にみられる血性粘液性帯下(出血の混じったおりもの)を指し、産徴(さんちょう)とも呼ばれます。これは、子宮壁に貼りついていた卵膜が、子宮下部の開大に伴ってはがれ、出血を起こし、おりものに混ざって出てくるのです。
おしるしが来ると分娩が近いと言われていますが、実際はおしるしがあってから陣痛までの日数には個人差があり、おしるしがなくても陣痛が来ることもあります。
胎動が少なくなる
赤ちゃんが分娩の準備に入って、骨盤の中におさまっているため、今までより胎動が少なくなります。しかし、分娩前日でも胎動を感じるという人もいるので、胎動が減らないから分娩はまだ先、と考えるのは危険です。
前駆陣痛
陣痛には2種類あり、分娩の予行練習といわれる前駆陣痛と、分娩につながる本陣痛があります。前駆陣痛は、しばらく休んでいれば自然と治まるもので、規則性はありません。多い場合には日に4~5回起きる場合もあります。
本陣痛との見分け方
規則正しいおなかの痛みがある場合、本陣痛になります。といっても、すぐに産まれるわけではありません。時間を計測し、10分間隔(経産婦の場合は15分)になったら病院へ連絡するというのが目安になります。
前期破水
前期破水は、陣痛が起きるよりも前に卵膜が破綻し、羊水が流れ出てしまうことを指します。前期破水が起こる原因は、絨毛膜羊膜炎という子宮内の感染症や、羊水過多や多胎妊娠によって子宮壁が伸びすぎる事、子宮頸管が弱く開いてしまうことなどがあります。全分娩の5~10%にみられます。
尿漏れとの見分け方
前期破水と間違いやすいのが、尿漏れです。尿漏れは腹圧がかかったとき、たとえばくしゃみをしたときなどに起こりやすいのに対して、破水の場合は、腹圧がかかっていないにもかかわらず、ちょろちょろと出てきて、止められないということ。
また、尿の場合にはアンモニア臭があり、黄色っぽくなります。破水の場合は、透明または白濁色となり、自分の意志では止められません。破水かなと思ったら、清潔なナプキンやタオルをあて、すぐにかかりつけ医へ連絡をしましょう。破水後は、雑菌が入らないよう、シャワーやお風呂に入る、温水洗浄便座での洗浄は厳禁です。
妊娠10ヶ月の過ごし方
おなかが大きくなる妊娠末期、しかも臨月は運動不足になりがちです。医師から安静を指示されている人以外は、お産のときに使う筋肉を衰えさせないためにも、股関節のストレッチやスクワットなど、部屋の中でゆっくりできる運動をしておきましょう。
他にも、赤ちゃんとの生活に向けての準備を確認しておくと安心です。
入院セットの準備
臨月に入ったら、いつ分娩となってもおかしくありません。陣痛や破水がおきたらすぐに持っていけるよう、入院に必要なものを荷造りしておきましょう。
- 母子手帳や保険証、診察券
- 洗面道具
- パジャマや下着など
- 印鑑やお金
- 陣痛を楽にするためのグッズ
- 赤ちゃんの肌着やベビーウェア
必要なものは病院によって異なりますので、荷物に不足がないか確認しておきましょう。母子手帳などの普段持ち歩くものや、印鑑やお金などの大切なものは、置き場所を決めて家族に知らせておくと安心です。
産院への移動手段と帰宅方法の確認
いつ陣痛や破水が起こってもよいように、産院へ行く手段を確認しておきましょう。陣痛が来たら、自分で車を運転するのは危険です。家族の運転する車か、タクシーを使用します。事前に陣痛タクシーの登録をしておくといざというときに安心です。
また、退院時に自家用車で帰る予定の人は、新生児用のチャイルドシートの設置も忘れずに済ませておきましょう。
出産はもうすぐです!
臨月になったら、分娩を想定し、今までジェルネイルをしていた人もオフしておきましょう。除光液なしで簡単にはがせるシールなどもあるので、工夫すれば楽しめますよ。
産後は慣れない育児で大忙しの日々が待っています。今のうちに、無理のない範囲で自分の時間を大切に過ごしてくださいね。
※この記事の情報は2017年12月15日取材現在のものとなります。最新の情報は医療機関へ受診の上、各医師の診断に従ってください。