妊娠5ヶ月の妊婦の身体
安定期に入り、多くの妊婦さんがつわりも治まり、体も気持ちも少しずつ楽になります。食欲が増えて、「今まで食べられなかった分も食べよう」と考えたり「赤ちゃんのために栄養バランスのよい食事をとろう」と考えたりして、頑張って食べようとする人も出てくるでしょう。しかし、頑張りすぎは禁物です。
おなかの大きさ
妊娠5ヶ月頃から、妊婦健診で「子宮底長」を計測することがあります。これは今まで恥骨の中にすっぽり隠れていた子宮が、大きくなって恥骨よりも上にはみ出してくるため、子宮の大きさ、つまり胎児の成長の目安として計測するのです。
しかし、今はエコーで胎児の大きさなどがわかるようになっているため、必ずしも子宮底長と赤ちゃんの大きさは一致しないこともあります。子宮底長の目安となる数値を、昔は計算で求めていました。
妊娠5ヶ月中(19週まで)は妊娠ヶ月×3cmが目安となり、妊娠5ヶ月(16週~19週6日)は15cm。子宮底の高さは、おへその下から指の太さ2~3本分下がった辺りです。
なお、子宮底長は人の手でメジャーを使って計測するため、測り方で誤差がでることがありますし、おなかが大きくなるのには個人差があるので、目安と違っていても焦る必要はありません。
体重増加の目安
この時期の体重は、週に0.3~0.5kg増やすことが推奨されています。
ただし、妊娠前から太り過ぎていた人は、医師や助産師の指導をしっかりと聞き、増やし過ぎないようにしましょう。逆に痩せ気味だった妊婦さんは、週に0.5kg増を目標とするのがいいでしょう。
妊娠5ヶ月のつわり
妊娠初期(4~6週)に始まったつわりも、妊娠5ヶ月(16週)を迎えるころには、ほとんどの妊婦さんが治まっています。ただし、一度治まったと思ったつわりがぶり返してくるという人もいます。
これは、日に日に大きくなる子宮が胃を下から圧迫しているせいで起こります。大きくなってきた子宮によって胃が圧迫されることで、胃酸が逆流してしまい、つわりのようなムカムカを引き起こすのです。
一度にたくさんの量を食べようとせず、少量の食事をこまめにとることで楽になります。また、こまめに食事をとることが無理であれば、おやつを食べるなどして必要なカロリーと栄養素を摂取するようにしましょう。
胎動の感じ方
早い人では、17週頃にはじめての胎動を感じることができます。人によって感じ方はさまざまですが、おなかの中で「グルグル」とガスが動くのに似ている感覚や、腸が「ピクピク」するように感じるという人が多いようです。
この時期に胎動が感じられなくても、焦る必要はありません。妊娠6ヶ月になる頃には次第に感じられるようになりますよ。また、この時期の胎動は自分にしかわからないもの。パートナーに「今、動いているよ!」とおなかをタッチさせてもわかってもらえません。
おなかにできる正中線
妊娠5ヶ月以降、おなかの真ん中に縦に1本線ができてしまうことがあります。これは正中線といい、妊娠線とは別のもの。正中線は生まれつき誰にでもあるものですが、妊娠中期以降、急にできたように感じる人が多いでしょう。
妊娠によって急激に分泌量が増える女性ホルモンにメラニン色素を増やす働きがあり、それによって色素沈着を起こすためです。たいていの場合、産後に女性ホルモンの分泌が減るとメラニン色素の生成が減るため、正中線の色は薄くなり目立たなくなります。
妊娠線は、急激に大きくなったおなかやおっぱいの成長に皮ふの伸びが追いつかず、肉割れを起こすことが原因でできるもので、産後も跡が残るため、正中線とは全くの別物です。
妊娠5ヶ月の胎児の大きさと発育の様子
妊娠初期に主要な臓器は既に形成されています。体型はほっそりしていますが、既に人間らしい体つきになっています。運が良ければ、エコーで指しゃぶりをする愛らしい姿も見られるでしょう。
妊娠5ヶ月になると、聴覚がほぼ完成し、外界の音に反応するようになります。この頃から皮脂腺の分泌が開始し、頭髪や爪などができてきます。
胎児の推定体重(EFW値)は、エコーによって測定した胎児の各部位の大きさから計算で求めます。現在は、エコーの機械で自動的に計算をしてくれるので、エコー写真に記載されています。
目安としては、18週で126g~247g、19週では166g~328gです。
妊娠5ヶ月の妊婦健診
- 体重測定
- 血圧測定
- 尿検査(糖とタンパク)
- 腹囲や子宮底長の計測
- 浮腫(ふしゅ)の有無
妊娠5ヶ月での検査項目は上記の通りです。妊娠初期の項目に比べて、この時期にはむくみが出やすいことから浮腫(ふしゅ)の有無を調べるようになります。妊婦健診の回数は、4週に1回です。
妊娠初期は経膣プローブを使用していましたが、おなかが大きくなってくる中期以降は、経腹プローブというおなかの上からあてるエコー(超音波)検査に変わります。
ただし、中期以降でも、胎盤や子宮頸管の状態を確認する時は経膣プローブを使用することがあるため、引き続き受診時の服装には配慮しておきましょう。
赤ちゃんの性別がわかる
外性器の発達が終わる17週~18週くらいから、エコーで胎児の性別がわかるようになります。しかし、胎児のポーズによっては出産までわからないということもあります。
逆に出産まで性別を知りたくないと思っていたのに、エコーではっきりおちんちんが見えて男の子だとわかってしまうこともあります。
3Dエコーと4Dエコーの違い
平面で見る2Dエコーをコンピューター処理して3D(立体)画像化したものが3Dエコーです。それをリアルタイムで動いているようにコンピューター処理したものが4Dエコーです。
2Dエコーは白黒の画面ですが、3Dや4Dには色がついており、この色もコンピューター処理で色づけしたもの。胎児の診断は、2Dエコーで十分にできます。
3D・4Dエコーを自費で受ける場合、妊娠5ヶ月前後で受けると胎児の全身がエコー画面の中におさまります。
妊婦健診を待たずに受診した方がよい場合は?
少量の出血があり、軽度の下腹部痛、下腹部膨満感(おなかが張った状態)などがみられる場合、切迫流産が疑われます。また、健診後や性交後に一時的な出血やおなかの張りが起こることもあります。
この場合は様子を見て、出血やおなかの張りが治まれば、次の日や予定していた健診の日に受診すれば大丈夫です。しかし、出血やおなかの張りが続く場合には、かかりつけ医に相談しましょう。
月経2日目のような大量の出血、急激な下腹部痛、安静にしていてもおなかの張りが治まらないような場合には、時間外であってもすぐに連絡して受診しましょう。
妊娠5ヶ月にやっておきたいこと
安定期に入って、できることも増えてくる時期。しかし、自分のやりたいことを優先するのではなく、常におなかの赤ちゃんも一緒に行動しているということを忘れずに過ごしましょう。
鉄分を積極的に摂取する
妊娠5ヶ月になると、胎盤が完成します。すると、胎児へ血液を送るようになった妊婦さんの体は、子宮へ送りこむ血液の量を増やすために、体を循環する血液の量を増やします。
このとき、赤血球の増加量より、血液中の液体成分である血しょうの増加量の方がはるかに多いため、見た目上は血が薄くなって、貧血のような状態になってしまいます。妊婦さんにとっては生理的なことですが、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。
また、胎児の発育にも鉄分は必要です。赤身の肉や魚、レバーなど鉄分の多い食材を意識して摂取しましょう。医師から鉄剤を処方された場合は、薬剤師の指示をきちんと守り、鉄の吸収を阻害する飲み物(紅茶や緑茶など)や食べ物(クルミ、チョコレート、ブルーベリー、蜂蜜など)は鉄剤を飲む前後30分にはとらないように気をつけましょう。
運動習慣を身につける
食欲が旺盛になる中期以降は、運動習慣を身につけることが大切です。体を動かすことで血行もよくなり、むくみ、肩凝り、腰痛、便通の改善につながります。また、出産には体力が必要です。安産のためにもしっかり体を動かしましょう。
しかし、以下のような運動は避けるのが無難です。
- おなかに圧のかかるような運動(ウエイトトレーニング)
- 人との接触があるスポーツ(バスケットボールなど)
- 上体をひねる運動(ゴルフ、テニスなど)
歯科検診を受ける
妊娠中はエストロゲンが増えることで、歯周病の原因菌の増殖を促し、プロゲステロンが炎症の元であるプロスタグランジンを刺激するため、妊娠中期~後期にかけて、妊娠性歯肉炎が起こりやすくなります。
つわりで十分な口腔ケアができていなかった人もいるかもしれませんが、歯周病の妊婦さんは、低出生体重児早産リスクが高くなるという研究結果もあります。
妊娠中期に入ってつわりが治まったら、歯科検診をうけ、必要に応じて治療を受けておくことが重要です。おなかが大きくなるとあおむけの体勢が苦しくなるため、早めに行きましょう。
戌の日のお参り
戌の日とは、妊娠5ヶ月に入って暦で最初の戌にあたる日に、安産祈願のお参りをし、腹帯を巻き始めるという日本古来の風習です。犬は多産にもかかわらず、お産が軽いということにあやかっています。
最近では、最初の戌の日にこだわらず、都合のよい戌の日にお参りをする人も増えていますし、腹帯をまかない人も増えています。しかし、妊娠中ならではのイベントですので、機会が設けられるのであればぜひ記念にやっておきましょう。
待ちに待った安定期
日に日に大きくなっていく赤ちゃんを感じながら、ママになっていくことを実感する時期。エコーで小さいながらもしっかりした赤ちゃんの全身像をみてビックリできるのも今ならでは。
まだおなかの大きさも目立たない時期で、つわりもなくなり身軽に動けるようになり、今のうちにと仕事や家事、旅行などの計画を立てている方も多いかもしれませんが、確実に体は変化しています。
長時間同じ姿勢を取り続けるような作業や移動、足場の悪いところでの作業、高いところのものを無理して取る、おなかに圧がかかる体勢での家事、重い物を運ぶなどは無理をせず、この時期から誰かに任せていくということも必要です。
少しずつ休み上手になっていきましょう。
※この記事の情報は2017年11月30日取材現在のものとなります。最新の情報は医療機関へ受診の上、各医師の診断に従ってください。